桜蘭高校ホスト部
□4年目のチョコレート
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『………はぁ』
今年もやってきたバレンタイン。
この日のために計画を練りに練って、自分の中で作れる最高のチョコを作ったつもり。
うん。"自分の中で"だからね。
最高とか言っちゃったけど特別にすごいことはないからね。
でも今年も渡さずに終わるだろう。
作っては捨てる……これを3年間繰り返した。
今年も…きっと……。
でも一応持って行ってしまう辺り、自分の中で小さな希望を抱いているんだろうな…。
そんなことを思いながらも無駄にでかい校門を潜(くぐ)った。
私のクラスは1-A。
言うなれば1年生の中で1番家柄と頭脳が上のクラス。
私もそこそこお嬢様で頭はいいんだと思う。
いや、自惚れとかじゃなくて実際A組だし学年7位だし…。
まぁ、3年間作ったのに渡さないチョコのお相手はですね…同じクラスの人なわけですよ。
しかも超人気の、ね。
初めて会ったのが中等部1年で、そこから。
しかもこれが初恋。
自分がここまで一途だったとは…ってビックリしてるからね!
しかも初めての恋なんて何したらいいか分かんない!
お蔭で何も行動起こしてないぜはっはー!←
……はい、ごめんなさい。
いや、実際私はテンション高い方だとは思うけどチキンでごめんなさい。
好きな人の前ではあんまり話せないヘタレでごめんなさ「おはよう」…
………あれ?好きな人思い浮かべすぎて幻聴が聞こえたのかな…
好きな人の声でおはようって言われたような気がしたんだーあはは。
……あははじゃない!
思いっきり声がした後ろを振り返ると、幻覚ではなく間違いなくその人がいました。
『おわぁっ!!おおおおはようっ!』
「……キョドリすぎじゃない?」
『うんごめん!』
「いや。相変わらず面白いね」
『いやいやありがとう!じゃ、』
「うん」
びびびビックリしたぁ!
いきなりだったもん!
って何私はいきなり会話終わらしてんだよ!
わざわざあいさつしてくれたんだからもう少し会話引っ張ってても良いじゃん!
私のバカバカバカバカ!!
…でも、少しでも話せた…。
そう思うと自然と口角が上がってニヤけてしまう。
『…ふふ、』
「なんて顔してんの?」
『っ!あ、おはよう』
「おはよう」
いきなり目の前に現れた友達。
やばいやばい。こんなニヤけた気持ち悪い顔、好きな人には見られたくないもんね。
見られたのが友達で良かった。
「で?どうすんの?」
『へ?』
「今年も用意、してるんでしょ?」
『……うん』
「今年もゴミ箱に捨てちゃうの?」
『………そうなるかもね』
「…告白しなくてもさ、渡すだけでも大きな進歩なんじゃない?」
『………』
「ま、無理強いはしないけど」
『……うん、ありがとう』
その会話が終わった後、好きな人をチラッと見る。
相変わらず3人でいるんだなー。
同じ部活の特待生くんと双子のお兄ちゃんと。
あ、兄が弟の肩に腕回した!
すっごい絵になる…今日もかっこい「どっちだっけ?」
………
『は?』
「あんたが好きなの、どっちだっけ?」
『何言ってんの?』
「常陸院くんなのは覚えてるんだけどさー、どっちだっけって思って」
『…はぁ』
「あ、ため息つかないでよー!」
全くこいつは……他人のことは大雑把に記憶して…
『…弟の方よ』
「え?」
『お・と・う・と』
「え?弟ってどっちだっけ?」
そうニヤニヤしながら聞いてくる目の前のこいつ。
…分かりながら聞いてるな…。
若干イラつきながらも無視しようとするならば色々やるのが目の前の奴。
でもな…名前を言うのもちょっと恥ずかしいんだよな。
…あれ?私ってこんなにウブだっけ?
いや、恥ずかしいじゃなくて恐れ多い?
でもとりあえず目の前の奴が異様に腹立つので腹をくくろう。(名前言うだけだけど)
『……ぉ…くん』
「え?」
『…おるくん』
「なんだって?」
『もう!馨くんだってばっ!!』
私がそう言った瞬間、あまりに声がデカかったのか視線が集まってしまう。
もちろん…あの人のも。
「うん、で?その馨くんが?」
『っ、ちょっと、』
「で?」
絶対楽しんでる…!
だってすっごい良い笑顔だもん!
ここで話を進めたら告白してるようなもんじゃない!
「僕がなに?」
『〜〜〜っななななんでもないです!ごめんなさい!』
うん。ホントごめんなさい。
そして私のキャパはオーバーしました。
ということで逃走します。
「え!?」
「あーあ…」
好きな人の驚きの声と、友達のため息混じりの楽しそうな声を背に教室を出た。
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