ココロヌクモル...

□脱退。
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【heroine1】

「―――、ミサトさん!!」

海軍本部に帰ってきた。
小舟に乗った私に真っ先に気付いたサナさんが声をかける。

「只今戻りました」
「お帰りなさい!御無事で何よりです!」

ありがとう、と返し船から降りる。

「お帰りー」
「青雉さん…ただいま戻りました」
「あ!ミサトさん!」
「え!?ミサトさん帰ってきたのか!?」
「ミサトさん!何かされませんでしたか!?」
「は、はい…ありがとうございます」

…何か、ものすごくお出迎えが多いな。
みんなよりちょっと帰りが遅くなっただけではないか。

そう思いながらも、まずは青雉さんの元へ。

「遅くなり申し訳ありません」
「いいえー。無事で何より」

相変わらず怠そうな感じで返された。
それも少し懐かしく感じる。

……でも、もうこの顔も見納めかな。

「………あの、」
「海軍、辞めるんだって?」
「!」

何でそれをと思ったが、大方、先に帰らせた海兵が言ったのだろうとすぐ解釈し、肯定の言葉を言った。

それを聞き、大きくため息を吐く青雉さん。
その後はしばらく沈黙が続くが、元帥のところへ行くように命令が下った。

「覚悟しといた方がいいよー」
「?」
「多分簡単には辞めさせてもらえないから」

海賊との口約束が理由なんて言ったらね。

そう言う青雉は少し楽しそうだった。

…他人事だと思って…。

私も大きくため息を吐きその場を離れた。


…覚悟、ね。
どうせなら一発ぶっ放してから去ろうかな。


そんな黒い考えを持ちながら、私は自分の部屋へ向かった。



「えーっと…、」

とりあえず必要な荷物をまとめた。
と、言っても必要最低限のもの。
つまり、お金と着替え。

マルコさんには「大事なものを置いてある」と言ったが、実際大事なものなんてなかった。
ただ、一文無しで漂流はしたくなかったからそういう口実を言っただけ。

…大事なものは、身につけている。いつも。

「……よしっ」

私は部屋を出た。
そしてすぐに元帥の元へ向かった。



コンコン...

「入れ」

ガチャ...

「………失礼します」

元帥の声の後、部屋の中へ入った。
「失礼します」の言葉が遅れたのは、中にいるメンバーを見てしまったから。

「………随分と総出で…」
「随分と遅かったな」
「何をしてたのかなー」
「わし達を待たすとは…」
「まーまー、いいじゃないの」

上から、元帥、黄猿、赤犬、青雉。

…何で海軍の大将が3人揃ってんのよ…。

気が遠くなった気がした。

「で、どのような御用でしょうか」
「あれ、わざわざ聞いちゃうの?」
「……辞めるだけなのに、4人もの許可が必要なのかと思いまして」

そう続ける私に、元帥は「まず遠征の報告をしろ」と言った。

「……惨敗です」
「お前がいたのにか?」
「買い被りすぎですよ。私は強くありません」
「謙遜してるねー」
「わし達が知りたいのはそこではない。その後だ」

赤犬の言葉に小さく舌打ちをする。

言わなくても知ってるクセに…。

「…知っての通り、海兵たちは先に逃がしました。私が海軍を辞めることを条件に」
「なぜ辞める必要がある。海賊との約束を守る必要はないだろう」
「私、嘘は吐かないんですよ。それに海軍にいるの……飽きました」

そう言ってニヤッと笑った私にブチ切れたのは赤犬。

「言わせておけば…!」
「落ち着きなさいよ」
「もっと詳しく聞こうじゃないー?」
「嘘を吐くな。理由があるはずだ」

赤犬を宥める青雉さん。
そして詳しく聞こうとする黄猿と元帥。

「……嘘は吐かないと言ったでしょう?」
「さっき君の部下が言っててねー。――"ユウキ"だっけ?」
「………」
「関係あるんじゃないの?」

…いらないことを。そう思いながらももう遅い。
ため息を一つ吐き、

「大切な人です。だから"敵"は嫌なんですよ」

真っ直ぐ元帥を見て言い切った。

「海軍を辞めて、どうするつもりだ…」
「白ひげに入るなんて言わないよねー?」
「言いませんよ。1人で生きます。だから邪魔しないでください」

もう良いでしょう?ため息交じりにそう言った。
私が海軍を辞める理由はちゃんと言ったのだ。
だからもう、この息苦しい環境から出させてほしい。

――その私の願いは聞き届けられるわけがなかった。

「残念だが、海軍を辞めさせるわけにはいかん」
「……何でですか?」
「そんなもの決まっちょる」
「君ほどの力があれば何を仕出かすか分からないからねー」
「簡単に言えば危険分子…ってとこかな?」

そう言われ、

「何もしませんよ…」

と言うが、

「海軍を辞める奴のことなんぞ信じん!」

と、赤犬にバッサリ言い切られた。

「諦めるんだな」
「……嫌ですね」

私はそう言うと、ドアのところまで歩きドアノブに手をかけた。

「あれー?どこ行くのー?」
「さようなら」

私は最高の笑顔を浮かべていたと思う。
黄猿さんの問いかけにニッコリ微笑むとそのままダッシュ。

「………」
「………あーらら」

良い笑顔しちゃって、なんて言う青雉を叩く元帥。

「何している。…捕まえろ」
「………」
「はいはい」
「大変そうだねー」

3大将もミサトに次いで部屋を出た。



……さて、どこに行こうか。

まぁ、まずは本部から脱出しなければならないのだが…。

いつ伝令が回ったのか次々と襲いかかってくる海兵。
来る人来る人を次々と薙ぎ払っていく。

刀を鞘に納めた状態で払っているから、打撲くらいで済むはずだ。

そんなことを考えている辺り、2ヶ月だけでもお世話になった海軍に感謝をしているのだろう。

「ミサトさん!!」
「………サナさん」

そんな私の前に現れたサナさん。

…悪いけど、今話している時間はないの。

「おい!」
「あーらら、見つけちゃった」
「おとなしくしてなよー?」

………ほらね。

話している時間はない。もう3大将が見えている。

「サナさん…ごめんなさい」
「え……ぐっ!」

鞘に納めた刀で、サナさんのお腹を突く。
苦しそうに、その場に蹲るサナさん。

…本当にごめんなさい…。

その後は3大将から逃げ切るため再びダッシュ。

…だが、黄猿はピカピカの実の能力者。
簡単に追いつかれた。

さて、前には黄猿。後ろには赤犬と青雉さん。
あなたならどうする?

「ふふっ」
「?何笑ってんのー?」

答えは簡単。

ドゴォン!!!


「「「!!」」」


―――横でしょ。


私は壊した壁から外へと飛び出した。
まぁ、結局はすぐに黄猿に追いつかれて攻撃をしかけられるが…

お忘れではないだろう。
今の私の身体能力は十二分に高いのだ。

つまり、

「!」
「…甘いですよ」

黄猿が仕掛けてきた攻撃(蹴り)を腕で止め、そのまま掴み…

ぶん投げた。

ドゴォォン!!
ガラガラガラ...


「……あれ?」


何か……壁が崩れてるんですけど。
私そんな力あったっけ?
私がこれなら、私より力が強かったユウキはどれだけ強いんだろう。

なーんて疑問に思うけど今はそれどころではない。
一番やっかいな人はいなくなったんだから、逃げるなら今だ。

「待てェ!!」
「待ちなよー」

チラッと後ろを振り返ると、

「……え、」

一斉に攻撃を仕掛けている2人。

ちょっと…待ってよ…


「キャアアアァァァア!!」


悲鳴を上げながら逃げる私は正常だと思います。



…って、冗談じゃない!
これは死ぬ!本当に死ぬ!

私は今まで以上にスピードを上げながら走った。



そこからは運が良かった。

船に乗り込むため、停船所へ向かった。
そこで待ち伏せていたのは下の海兵ばかり。
つまり、私より強い人はいなかったのだ。

なぎ倒していく。次々と。

ようやく船に乗り込むと、すぐに船を発進させる。
その間にも、マグマやら氷やらが飛んでくるが、なんとか防ぐ。

…さすがにもう剣は鞘から抜いてる。

段々陸から離れていく船。
さすがに能力者の赤犬は追ってこれない。

だが、青雉さんは海を凍らして追ってきていた。

予想済みだ。

私は服の中に忍ばしていた"あるもの"を取り出した。

それの"栓"を抜く。

「………ミサトちゃーん」
「はい?」
「いや、はい?じゃなくてね……まさか"それ"を……なーんて、」
「――ことあったりするかもですねー」

私は"それ"を青雉さんの方に投げた。
途端、真っ青になる青雉さん。

ドッガァァァン!!!!!

爆発する"それ"。
――爆弾は、いきおいよく氷と青雉さんをブッ飛ばした。


「…さようなら」


2ヶ月間、ありがとうございました。


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