短編集

□Secret
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「ふっ……ぅん……」

 重ねられた唇は熱かった。けれどその感触を味わう前に、唇を割って舌が侵入してくる。
 少しでも抵抗すれば、ギリッと舌に噛みつかれた。初めてのキスは……血の味がした。

「あっ、もう……」

 呼吸の方法が分からなくて、僕は酸欠状態に陥り、身体から力が抜けていく。
 先輩はそんな僕を解放してはくれず、自分が満足するまで口腔を蹂躙し続けた。
 どうしてこんなことになったのだろう。朦朧とする頭で考える。
 僕が先輩をいやらしい目で見てしまったからだろうか……。いくら考えでも、キスが止まることはない。

「ん、ぁ……っ」

 縋るものがなく、無意識に先輩に腕や脚を絡ませると、嘲笑う声が耳に入ってきた。

「キスだけで感じた? 硬いのが当たってんだけど」

「……っ」

 隠せない事実を突きつけけられ、僕は顔を真っ赤に染める。
 ズボンの下では、極限の状態で興奮したものが窮屈そうに下着を押し上げていたのだ。

「そんな綺麗な顔して、お前……ほんとは変態なんだろ?」

 答えられない。こんな経験自体が初めてで、自分にどういう趣向があるのかさえ、考えたことがなかった。
 
「まあ、いい。俺がたっぷり調べてやるよ」

「あっ!」

 シャツを首まで一気にたくし上げられ、僕は恐怖に身を竦める。
 そして、先輩は僕の腰を掴むと、吟味するように胸元を一通り眺め、唇を小さな突起に寄せてきた。

「柔らかいな……ちょっと筋肉つけろ」

「はぁ……んん……」

 白い肌の中で一部だけ淡いピンク色をした中心を、ペロッと舐め上げられて、くすぐったさに身を捩る。

「あぁ……っ!」

 そしてチュウっと乳首の先端を強く吸われた瞬間、腰がピクッと反応してしまった。

「乳首もコリコリに硬くなってきたぜ?」

 なじるような台詞も、甘く聞こえる。
 先輩は僕の反応に気をよくしたのか、執拗にそこばかりを嬲り始めた。

「いやぁ……あっ……」

 乳輪を優しく円を描くように舐められ、尖った先端はコロコロと舌で転がされる。
 背筋に痺れが走り、僕の股間は限界まで張り詰めていた。

「先輩……やっ、もうやめてくださいっ!」

「うっせーな」

「……つっ!」

 怒ったような声と、激痛。恐る恐る噛まれた場所を見ると、小さな肉粒はつうっと血を流していた。
 そして、それと同時に起きた身体の変化――。
 
(うそ……)

 下着をじわりと濡らす感触に、顔が青ざめていく。
 脚をもじもじ動かしていたら、先輩も僕の異変に気づいてしまった。

「なんだ、お前イったのか?」

 ギュッと股間のものを握られて、僕は喉を鳴らす。行き場のない羞恥心に、ただ僕はうつむくことしかできない。

「変態で、淫乱か……お前、友達いないだろ?」

 事実を言い当て、その理由がそれだと言うように、先輩は断言した。
 本当にそうなんだろうか。周りは皆、僕が男にイかせられるような淫乱だと思って、気持ち悪がっているのだろうか。
 だったら僕は、どうしたらいい……?

「けど、俺ならお前を可愛がってやる」

「……えっ?」

 真剣な眼差しに射抜かれる。僕は、その言葉に救われた。

「はぁ……ン、あっ、あぁ……っ」

 先輩の舌先が、血を追って下に降りていく。筋肉のつかない腹部に唇の痕を残され、僕はさっき受けた痛みをすべて忘れてしまう。

「あぁぁ――っ!」

 先輩のすることすることが快感になる。臍の窪み舌が滑り込んできて、僕は体を震わせて二度目の射精を放った。

「どんだけだよ?」

 呆れきったため息をついて、先輩は少年のようなあどけない笑みを浮かべた。
 
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