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□危険な花園
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右京のようになるためには、もっと積極的に行動するべきだと考える。
毎回毎回、身に覚えのない呼び出しに応じるのは、その一環なのだ。
そして、ホテルへの呼び出しを応じたのも、機会があれば相手と仲良くなろうという魂胆からだった。
「なにここ? こんなホテルがあるなんて、初めて知ったよ」
「うだうだ言ってねえで黙ってついて来い」
学校を終えて、私服に着替えてから駅前で待ち合わせしたのだが、左京は中性的な格好を指定された。
キャスケットを目深にかぶり、細い腰や脚が際立つデザインの服を着ている。
その姿は、まるでボーイッシュな女性モデルのようだ。男同士だが、カップルにしか見えないだろう。
(わー、すごい。遊園地とかゲームセンターみたい)
先日絡んできた男に連れて来られたのは、行ったことはないが、ひそかに憧れる場所のようで、左京はドキドキと胸を高鳴らせる。
黙ってろと言われたから声には出さないが、今の左京は子供のようにはしゃぎたい気持ちでいっぱいだ。
「お前が好きな部屋選ばせてやるよ」
そんな左京を察してなのか、男が初めて意見を聞いてくれた。
言い方はぶっきらぼうだが、左京は勝手に彼から優しさを感じとってしまう。
「うわぁ、どこにしようかな」
南国風バージョン。壁一面鏡張りバージョン。調教部屋バージョン。
明らかにヤバめのもあるのだが、左京はそれに疑問はないのか。
はしゃぐ左京を見て、男はようやくその異常さに気づいた。
(こいつ……やばい)
ラブホテルが初めてだというのは、金持ちの噂を聞いてたからしかたないとしよう。
しかし、今から犯されるというのに、こんなにランランと目を輝かせているのは、実は慣れてるからか。
(意外に男の趣味もあったりして?)
彼らの高校は共学ではあるが、左京みたいに綺麗な顔の人間に想いを抱く男子は少なくはない。
それに左京の兄である右京も、男女のどっちとも遊びまくってるのは有名な話だ。
(俺、大丈夫か?)
ここまで連れて来てしまったからには後に退けないが、ちゃんと男とできるかと不安になってきた。
女が大好きな健全な男子。もちろん、男を相手にするなんて初めてだ。
その場の勢いというのもあったが、左京があっさりついて来たのが誤算だった。
「あっ、ここがいい」
突然一つの部屋を指差して振り返った左京と目が合う。それは、一番メルヘンで初心者向けの部屋だった。
ズッキーン、その無邪気な笑顔が下半身を直撃する。
「うっ……おら、さっさと行くぞ!」
それをごまかし、左京の腕を引いてエレベーターに乗り込んだ。
「ずいぶんと狭い部屋なんだね。ベッドしかないし」
部屋に入ってもまだ、左京の興奮は治まっていなかった。
ビジネスホテルと呼ばれるとこなんだろうかと考え、狭い部屋をうろうろと徘徊する。
「ところで、名前なんていうの? まだ聞いてなかったよね」
「……二階堂大和」
「かっこいい名前。二階堂君、僕を誘ってくれてありがとう」
絶句だ。
(ありがとうだと?)
なんの感謝なのかと考えるだけで、恐ろしくなってくる。
これは、親友を苦しませたことへの復讐だ。これから恨まれることをしようとしてるのに、なんでお礼を言われるのだろうか。
大和は、生まれて初めて自分の取った行動を後悔しつつあった。
「てめぇ……余裕ぶっこいてんじゃねえぞ!」
「わっ!」
もう、迷ってる暇なんかない。大和は気合いを入れて左京をベッドに押し倒した。
(やってやる! 誰がこんな顔だけの野郎に負けるか!)
実はこの大和、高校入学してすぐに好きになった女子に、左京が好きだからという理由でふられた経験があった。
これだけじゃあ完全に逆恨みだが、親友も被害に遭ったことを知り、左京への恨みが再燃したのだ。
「これは罰だ。もう泣いて謝っても許してやらない」
「罰って……」
ぶっちゃけ、すべて大和の勘違いなのだが、左京は申し訳なさそうに表情を陰らせる。
右京のせいだとしても彼やその友達が傷ついたことには変わりない。だったら、ちゃんと罰を受けて、大和の気が済めばいいと思う。
(そしたら……友達になってくれるかな?)
友達のためにここまでする大和だ。きっと、仲良くなったら毎日が楽しいに決まっている。
友達を作ることを諦めていた左京だったが、大和とは本当に仲良くなりたいと思った。
「いいよ。なんでも罰は受ける。そしたら、僕のこと許してくれるんだよね?」
「あ、ああ……」
どこかでまだ、左京が逃げ出してくれることを願っていた大和は、もう後戻りできないと腹を括る。
今更だが、押し倒して重なった身体が熱い。
自分がやれるのは確実みたいだが、次の問題はどうやって左京に罰を与えるかだ。
(痛がることはなぁ……人としてなぁ……)
ようは、左京が女にちょっかいかけなくなればそれでいいのだ。
だったら無理やり身体を開いて強姦するより、快感を与えて男に夢中にさせりゃあいい。
「服脱げよ」
そうと決まったら、善は急げ。
大和はわずかに上擦った声で左京に命令し、熱っぽい眼差しを送った。