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□愛のSCREAM
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 夢だと思った。からかわれているのかとも。
 面接すら臆するような大手企業。そこが、特に秀でたとこもない俺なんかを履歴書だけで採用するわけがないと。
 しかし、現実は小説より奇なり。恐る恐る会社に足を運ぶと、ウェルカムサンキューで迎えられた。
 そして入社一カ月。同期で一つ年下のマドンナといい雰囲気になり、付き合い始めたのがつい最近。
 暗かった人生に一気に光が差した気分だ。まさに大どんでん返し。神様より、仏様より、俺は俺を雇ってくれた方様に感謝している。
 本当にありがとう。誰かも明かされてないが、あなた様のために、俺は死ぬ気で働きます。会社にどこまでも尽くしていくつもりです。





「ねえ、宇佐美君知ってる?」

 甘えた声にはまだ慣れず、自然と寄り添ってくる彼女、松木冴子にいささか俺は緊張気味だ。
 顔には出さないように極力平静ぶって、なにくわぬ顔で「なにが?」と聞き返す。
 ここは俺、宇佐美竜也の住むアパート。
 十回目のデートにしては、なかなかいい手応えだ。と言っても、清楚なお嬢様タイプの冴子に手を出すのは躊躇われ、まだキスもしていない。
 ゆっくり関係を深めていければいい。それは半分言い訳で、この歳で童貞な自分に焦ってるのも事実な今日この頃。

「ずっと部長って不在だったじゃない? 来週ロスから戻って来るんですってよ」

「そうなんだ。いい人だといいね」

「仕事はかなりできる人みたいだけどね」

 実際、こうして会話を交わしている最中も気はそぞろだ。
 会話のボキャブラリーセンスを持たぬ俺は、冴子がつまらない思いをしてないかと、内心ハラハラしている。
 なんとなく付き合い始めたけれど、本当にこんな根暗な俺なんかでいいのかと、しつこく問いただしたくもなる。

(ああ……でも、本当に可愛いし綺麗だな。冴子は)

 気が早いが、結婚も視野に考えていた。
 この子と結婚することができたら、一生俺の人生はバラ色だ。
 
「あっ、やだ……こんな時間。そろそろ帰るね。親が家に毎日電話するのよ。早く帰ってないと怒られちゃう」

「送るよ」

「タクシー呼ぶから大丈夫よ。今度はうちに遊びに来てね」

 楽しみにしてるよ。そんな言葉も告げられず、俺は玄関で彼女を見送った。
 ため息が出る。せっかくの家デートは、自分のヘタレ具合を知っただけで終わった。
 次こそは……!
 社交辞令かもしれないけれど、家に遊びに行く約束は取りつけられた。そのことに小さくガッツポーズを作り、俺は冷蔵庫から缶ビールを取り出す。

「ふぅ……どっと疲れたな」

 そういえば、冴子が話していた部長はどんな人だろうかと考える。
 仕事は厳しいが、先輩も上司も同僚も、みんないい人が揃う明るい社内だ。ここで噂に聞く超エリートの部長が入るとなれば、今までのようにはいかないだろう。
 冴子とのことも大切だけど、今は仕事を覚えることが一番だ。せいぜいその部長を怒らせないように頑張らねば。
 
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