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□愛のSCREAM
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真実の愛に辿り着いた時、俺はその恐ろしさを知り、悲鳴を上げるだろう。
彼女ができた。生まれて二十四年、初めての彼女ができた。
顔はそこそこ整っている。自慢ではない。周りの評価だ。
大手のいい会社にも入れた。これはかなりラッキーだったと思う。
順風満帆に見える俺。しかし、その過去は暗く重いものだった。
俺は中学三年の夏、同性から告白された。春先に転校してきたばかりの同級生で、名前も知らなければ、顔もろくに覚えてはいない。
ただ覚えているのは、やたらと女子に人気があったことだ。格好いい転校生に、一時期女子が浮つき、騒然としていた。
クラスも違う俺は、そいつとはなんの関わり合いもない……はずだったのだが、突然の有り得ない告白で、俺の人生は急降下したのだ。
告白は当然断った。問題は、その後に起きた事件だ。
秋――今でも悪夢にうなされる、埃っぽく湿った体育館倉庫。そこに俺は何者かに連れ込まれ、そして陵辱を受けた。
相手は男だった。俺の勘が正しければ、それは告白してきた転校生。
揉み合いになって引きちぎった学ランのボタンは、現在も証拠としてこの手の中にある。
犯行を突き止められなかったのは、襲われた時に背後から目隠しをされたことと、そいつがまた転校して行ってしまったせいだ。
それ以降、俺は対人恐怖症となり、暗く日の当たらない場所で生きてきた。当然友人もできず、男に犯されたトラウマを持つせいで、女の子にも近づけなくなった。
本当に、本当に虚しい人生だったと思う。なんとか大学を卒業しても、就職先は見つからず、百社以上の面接を落とされてきた。正直、死のうと考えたこともある。
でも、神様は俺を見捨ててはいなかった。不合格通知をもらった会社を下請とする親会社のお偉方が、俺の履歴書を偶然見て気に入ってくれて、うちに来いと言ってくれたのだ。