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□ワレワレハ地球人ダ
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放任ならずっと放任を貫いてくれればよかったのに、幾度となく学校の教師に呼び出され、我が子が他と違うと知ると、修也の親はまるで隔離するように校則の甘い私立にぶっ込んでしまったのだ。
なにも知らされていなかった吾妻は、ただただ愕然とした。当時の記憶はまだ、心のしこりとして残っている。
可愛がっていた子供がある日突然、親離れしてしまった心境と似ているだろう。
「でも吾妻がボクと同じ学校に来るとは思わなかったよ」
「嫌だったのか?」
「まさか……てか、別に嬉しくはないけどね!」
これだからほっとけないんだろうと、吾妻は内心ごちる。
嬉しさを隠せず顔を綻ばせてるくせに、意地っ張りな口は真逆のことを言う。これでは、構ってくれと言ってるのも同じだ。
そんな可愛いことされては、ほっとくこともできない。そう思ってしまう自分はかなり重度の親バカだ。
吾妻は深いため息を洩らして、まだ二人が一緒だった小学生時代を思い出す。
「空がキレイだから、外に行こうと思って」
そう言った修也は満面の笑みで、キラキラと瞳を輝かせていた。
授業中突然教室を飛び出して、校庭に駆け出して行った修也を捕まえた時に聞いた言葉だ。
担任の教師はカンカンに怒っていたけれど、吾妻だけは感動していた。
こいつは大物だ。自分の感性で生きる修也が眩しく、羨ましいとさえ思った。
「どうして修也君は他の子と同じようにできないのかな? 授業中に外に出るのがいけないってことはわかるよね?」
「んー?」
「もっと普通にしてくれないと、先生本当に困っちゃう」
普通ってなんだ?
普通でいることが偉いのか?
修也はこのままでいいと思った。このままがいいと思った。
他と同じでいる必要はない。修也は修也だと、大声で叫びたかった。
自由に羽ばたいていた修也。その翼をもいで、飛べなくしたのは誰だ。親か、教師か、同級生たちか、それとも……。
実のところ、協調性がなく、周りに溶け込もうとしない修也に苛立ち、距離を置いた時期もあった。
自分にだけは我が儘を言い、面倒をかけることを疎ましいと感じ、きつくあたってしまったこともある。
今はそんな自分を恥じていた。三年間、離れ離れになってわかった。
修也がいなくても楽しく生活する自分。でも、心にぽっかりと穴が空いたような虚無感だけは、ずっと胸にくすぶっていたのだ。
常になにか忘れ物をしたような感覚に囚われ、落ち着かない気持ちにさせられたのは、修也が傍にいないからなのだと、後に気づいた。
結果、吾妻は中学時代の友人より修也を優先したのだが、それを本人に言ったところでどうにかなることでもないのはわかっている。
修也には自分が必要だと思う反面、修也も修也で吾妻がいなくても楽しくやっていただろう事実には目を向けず。
道端のタンポポに心を奪われている修也の腕を掴み、自分に視線を向けさせると、もう離さないと吾妻は勝手に誓った。