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□ワレワレハ地球人ダ
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――ボクハ宇宙人ダ。
「地球人の調査をするために来たんだ。極秘任務なんだよ」
「なんの?」
「そ、それは……生態系とか思想とか、とにかくいろいろだよ」
「ふーん? 俺が記憶する限り修也は人間で、それこそおねしょしてベソかいてた頃からの幼なじみだと思ってたけど?」
「うっ……聞いて驚け! それはボクが吾妻の記憶の操作をしたからだ」
聞いても驚かないと、背の高い少年は小柄な少年に呆れた眼差しを向けた。
今日は高校の入学式があり、二人はその帰路の途中にいた。暖かい風が頬を撫でる。小柄な少年の色素の薄い茶色の髪がふわりと靡いた。
「どうせ操作するなら、おねしょとか恥ずかしい記憶なんて作らなけりゃいいのに」
「あ!」
そりゃあそうだ。言葉に窮した修也は、負けを認めたように黙るしかない。
足を止めた修也を一瞥すると、吾妻は顎をしゃくって先を促した。
大事な話があるからって、なにを言い始めるかと思えば……頭が痛い。
幼なじみはいつからこんなおかしな人間になってしまったのだろうか。昔から変わった少年だったが、唐突に自分が宇宙人だなんて言い出したりはしなかったのに。
その、変わってることが原因で、中学は私立の男子校に入れられ、三年間二人は別々に生活していたのだけれど。
学校が違うというだけで、三年間お互いすれ違い、たまに顔を合わせるだけの関係性しかなくなっていた。
吾妻は新しい環境に溶け込み、修也はなにかと忙しいと遊ぶ時間も作らなかった。
修也の親は共働きで、放任主義だ。放任主義とは都合のいい文句で、はっきり言えば子供に興味がないだけだ。
近所に住み同い年だった吾妻が、そんな親の代わりに修也の面倒を見てきたと言っても過言ではない。
箸の正しい使い方を教えたのだって、親ではなく吾妻なのだ。冗談でこんなバカなことは言えない。