Do you〜?

9話
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 だいたいにして、こうやって普通に会話してること自体がおかしいんだ。



 こんなやつと馴れ合うつもりはない。




「オレが祝わなくても、てめーには祝ってくれるやつなんて腐るほどいるだろ。他あたれよ」




「そんな腐ったものなどはいないよ」




 キリッと男らしく断言されたけど、そんなのウソだってバレバレだからな。



 むしろ意味わかってんのか?



 平然と日本語が得意だとかウソつくようなやつだからな。




「いや、いる。絶対にいる。ああ……ほら、瀬名だっているじゃん」




「彼女は関係ない。僕には君だけがいればいい」




 うわっ、なんか気持ち悪いこと言われたし。



 瀬名ってこいつの婚約者かなんかじゃなかったのかよ。変態マッチョだから相手にされてねえのか?



 オレだって相手になんかしたくない。



 そういえばこいつ、瀬名の前でもすかしてて笑った顔見たことねえな。



 なんでオレの前でだけいつも満面の笑みなんだよ。不愉快だから、ほんとやめてほしいぜ。




「君しかいらない――あっ、待ってくれ!」




 マッチョ野郎の隙をついて、オレはダッシュで逃げ出した。



 あいつも油断していたのだろう。珍しくオレは逃げ切ることができ、なんとか学校にたどりつくことができた。




「結城? どうしたそんな汗だくで」




「いや、なんでもない」




 朝練を終えて、とっくに着替えもすませている筒井に声をかけられ、少しだけ気まずいオレは目を逸らしてしまう。



 気にした様子はなかったが、筒井はそれ以上はなにも聞かないでいてくれた。



 筒井はあれ以降、普通の友人のような態度で接してきてくれるが、このまま返事を先延ばしにしておくわけにもいかないのもわかっていた。
 


 どうせ返事は決まってる。



 またひとりに戻るだけだ。なにも悲しみなんて覚える必要はない。




(ほんと筒井って、いいやつだよな)




 普通に友達でいてくれたらと思ってしまうが、それはオレのわがままでしかない。



 友達なんていらない。これまでどおり、それでいいじゃないか。



 相変わらず戸村は、オレの動向を探るようにニヤニヤと観察しているようだ。



 筒井はまだ、あの話を戸村にしてないのだろうか。




「ねえねえ、ノッチ知ってたー?」




 オレに少し遅れて教室に入ってきたあいつは、彼女然としている瀬名を連れ立っていた。



 ざわつく教室内。



 イライラと席につくオレに、戸村がもったいぶるような感じで声をかけてきた。




「明日は皇帝様の誕生日なんだよー」




「だから?」




 聞いてもいないのにわざわざ教えてくれなくていいって。



 しかも当の本人に聞かされて知ってるし。




「冷たーい。お祝いしてあげないの? ノッチがお祝いしてあげたら、皇帝も喜ぶんじゃない?」




「なんでオレが」




 あいつがぼっちになろうが、寂しい思いしようがオレには関係のないことだ。



 なにもオレが心配してやることじゃない。




(げっ!)




 教科書やノートを鞄から取り出そうとしたオレは凍りつく。




『阿久津讓Birthday party招待状』




 だれだこんなゴミひとの鞄に入れたやつ!



 うっかり目を合わせてしまったマッチョは、オレにとびっきりの笑顔でウインクをよこしてきやがった。




(あの野郎……)




 あとで絶対に捨ててやる!










 
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