Do you〜?
□5話
3ページ/4ページ
オレに気づき、むくりとやつは立ち上がる。
保健室を出て行ったとばかり思っていたが、ずっとここにいたのだろうか。
薄い布一枚しか隔てていない場所に、まさかこんな変態が潜んでいたとは……。
それどころか、短時間だろうと無防備に寝入ってしまうなんて、危機管理能力低すぎだろオレ。
もっとしっかりしなきゃダメだな。うん。
「起きたのか? もう少し寝てても問題なかったんだよ」
「な、なにしてんだよ! 貴様は!」
「ん? 筋肉を強化するためのTrainingをしてたんだ」
普通に筋力トレーニングでいいじゃないか。
強化とか言われると、なんかゾッとするわ。
「じゃなくて、こんなとこでなにしてんだよ!」
「What?」
聞いてんのはこっちだっつーの。
なにか考えるように黙り込んだのち、こいつはなにを思ったのか、いきなり閃いたようにポーズをとりだした。
モストマスキュラー
「どうですか? 僕の筋肉は魅力的ですか?」
アブドミナル&サイ
加えて、ニッと白い歯
だーっ!!
だからもういいって!
またおかしなもん見ちゃったじゃねえか。
(やっぱり、アレはこいつだったか……)
ほんの1パーセントほど、こいつはあのときの変態とは違うのかもしれないと、オレは思い始めていた。
学校にいるときのイメージとは、まったく異なっていたからだ。
しかしそのわずかな可能性すら、こいつは自らぶち壊してくれた。
もう、疑う余地はどこにもない。
「ところで、足の……フッ、具合は……フン、どうだい?」
だからこんなとこでスクワットすんなー!
いいから、さっさと体操服を着ろ。
「大丈夫だから、ほっといてくれ」
上半身の筋肉が剥き出しにされた身体はなるべく見ないようにして、オレは素っ気なく吐き捨てる。
おかしなもん見せられて、そろそろ目が腐りそうだ。
「助けてもらったのは、感謝する。だからもうオレに構うな」
そしたら今度こそ本当に、こういった変態行為のことは忘れてやる。
ちょっとだけ申し訳ない気持ちもあって、遠まわしに礼を伝えた。
なんで迷惑なことをされたオレが礼を言わなくちゃならないのかわからないが、なにも言わないのも後味が悪い。
それは常識的に考えても、当然のことだろう。