Do you〜?
□7話
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「I love you more than anyone else」
本気でイラッとした。イラッどころの話じゃない。
頭の血管が全部ぶち切れて、ぶっ倒れてるんじゃないかと思った。
なんだよ?
だから、なんだって言うんだよ?
そんなの、オレに関係ないだろ。オレにどうしろって言うんだ。
「おまえ……なに言ってんのかぜんっぜんわかんねえんだよ。日本語でしゃべれよっ!」
乱暴に言い放つと、こいつはオレの言葉に肩を揺らし、傷ついた表情を見せた。
オレの助言あっさり無視しやがって。ここが日本だってこと忘れんじゃねえよ。
親切心なんて、見せるんじゃなかった。
思い上がりも大概にしろ。おまえがどんなに大金持ちの御曹司だって、オレから見たらただの変態野郎だ。
「日本語なんてほんとは使いたくありませーん。てか?」
だんまり口を噤んでいる姿を、オレは鼻で笑ってやる。
すると野郎は慌てたように口を開いた。
「あっ……それは違う。僕は、君を愛しているんだ。君だって僕を愛している。だから、他の男とは仲良くしないで。笑いかけないでほしい。僕はとても悲しい気持ちになる」
「はあ? ますますわかんねえし」
だから日本語勉強しろって言うんだ。
それじゃあまるでカップルの会話だ。心底ゾッとするわ。
「Wait! 待って……行かないでっ!」
呆れて黙って教室を出て行こうとすると、背後でいまにも泣きそうな声が響いた。
ん? なんか衣擦れの音聞こえるけど気のせいだよな。
こんな場所で、しかもこんなタイミングで着替えなんてするやついないよな。
「お願いだから……僕を見てくれっ!」
ほんの少し振り返って見てみたら、上半身裸になって筋肉をアピールするポーズをとっていた。
サイドトライセップス
(アホらし……)
もういいだろ。オレ頑張ってつきあってやったと思うぞ。
泣き笑いなんて、見苦しいだけだからやめちまえ。
「――筒井?」
教室を出ると、先に行ったはずの筒井が廊下の壁に寄りかかって立っていた。
「遅いから心配になって探しに来た。なんか英語の怒鳴り声聞こえたけど大丈夫か?」
「ああ、オレもよくわかんないんだ。早口すぎてなに言ってるかわかんなかったし」
「俺も筆記はいいけど、リスニングは苦手なんだよ。なんだったんだろうな?」
またオレの顔を覗き込んできて、じっと探るような眼差し。
もしかしたら、お互いウソをついていたのかもしれない。
(べつにどうでもいいけどさ)
最強の矛と最強の盾があったとして、オレはそれをどう使うだろうか。
そんなのどっちも必要ない。
けっきょく、最後に頼れるのは自分だけなんだから。
他人はどうせいつか裏切る。裏切って刃を向けてくる。
そしたらオレは、自らの足で走って逃げるだろう。最初から武器も防具も当てにしない。
これからも、そうやって生きていけばいい。
To be continued...next