Do you〜?
□7話
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(なんか不気味だ)
いつもだったら、しつこいぐらいにじーっと見つめてくるのに。
おかしなリアクションしてきたりするのに。
オレの側にだれかいたから、おかしな行動をとらなかったのだろうか。
オレがひとりじゃないのが気に入らなくて、あんな顔をしてたのか?
(…………ん?)
もしかしてこれは、作戦が成功したってことなんじゃないだろうか。
それはつまり……
(やったーーっ!)
これでようやく、変態野郎の恐怖から解放されるんだ。
もう二度と、不愉快で気色悪くて忌々しくおぞましくて……ああ、あとなんだっけ? つまり、もうあんな恐ろしい思いをしなくていいのだ。
「結城?」
いきなり飛び上がって歓喜しているオレを、筒井は不思議そうに眺めていた。
そう、それからだった――
オレの新たな戦い(大袈裟に言うとな)が始まったのは。
喜んだのも束の間で、あいつは執拗にオレのあとをついて回り、ずっと延々と瞬きする間も惜しんで、監視するような目を向けてくる。
(あの野郎、ぬか喜びさせやがって!)
なぜあいつはオレに固執するのだろう。なんでオレなんだ。オレじゃなきゃいけないんだ。
いくら考えたってわかるわけない。変態の生態なんて考えるだけ無駄なんだ。
精神がやばいところまで追い詰められている。
オレが発狂するのも時間の問題かもしれない。
(勘弁してくれ……)
筒井と戸村と一緒に次の授業で使う教室に向かってる途中、それはまた始まった。
「阿久津って、なんかいつも結城のこと見てないか?」
問われて、オレはビクッと肩を竦ませる。
「阿久津となんかあったの?」
筒井はさり気なくオレとやつの間に立ち、突き刺さる視線を遮ろうとしてくれた。
そうすればやつの視界からオレの姿は消える。
筒井の行為はありがたいが、その強すぎる眼差しはせっかくの壁をも突き破ってオレのもとに届いていた。
なんて恐ろしいんだ。こんな恐怖、いままで味わったことがない。
「もしなんかあるなら相談しろよ?」
「な、なにもないよ。気のせいだろ」
筒井が訝しがるのも当然だ。ごまかそうにもそれには無理が生じ、難しくなっていた。
それほどまで、あいつの向けてくる視線が露骨すぎるのだ。
くそっ、目からおかしなビームでも出してんじゃないだろうな。
「なーんか煮詰まってるって顔だよね」
戸村がニヤニヤしながら目配せしてくるが、オレは気づかないふりして明後日の方向に顔を背けた。
「ウメちゃん、なんか知ってんのか?」
「ううん、ぜーんぜん。だってなにも教えてくれないんだもーん」
いやもう、オレ知らないし。まったく関係ないし。
教えることなんてなんにもないから。
「あれ? 皇帝どっかに消えちゃった。いつの間に?」
戸村に釣られて見てみると、やつの姿はどこにもなくなっていた。
(よかった……)
ホッとしたオレは、ようやく張り詰めていた身体の力を抜いた。
だよな。四六時中オレについて回るなんて無理なんだ。
いい加減あきらめて、二度とオレに関わらないようにしてくれ。