Do you〜?

6話
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「そうだ。渡部がウメちゃん捜してたけど、なんかやらかしたのか?」




「ああー! そうだ。今日のスポーツテストの結果、だれが三番になるか賭けてたんだ!」




 おい、こら! って、教師もグルならとやかく言えないな。



 マジで教師のくせになにやってんだ、あの担任は。




「ヒデは二番だよ。当然トップは皇帝様。で、肝心の三番は聞き忘れてたー!」




 こうして聞いてるだけだと、あいつはパーフェクトすぎて欠点なんてないみたいだ。



 突然保健室で筋トレを始めるような、頭のおかしいやつなのに……。



 ところでヒデってだれだ? 秀時のヒデか? いつもはそう呼んでんじゃん。



 無駄にオレにトッキー推ししてくるなよ。




「じゃっ、またあとで」




 来たとき同じ勢いで、戸村は保健室を出て行った。



 ヒデだけ置いてったけど、オレはどうすればいんだよ。



 幼なじみなんだから、一緒に連れてってやれよな。




「オレ、着替えなきゃなんないし教室戻るけど、筒井は?」




「俺も一緒に戻る」




 うん。そうなるよな。



 ここで拒絶するほうがおかしいから、そうするしかないんだけど。



 なんだか二年になってから、うまくいかないことばかりだ。



 少しずつ蝕むように、平穏な日々が崩れ始めている。



 マッチョに呪いでもかけられてるんだろうか。



 どこかで軌道修正しないといけない。









 筒井は思ってたとおりの、気さくで話しやすいやつだった。



 たとえ相手がだれであったとしても、その姿勢は変わらないだろう。



 その性格のせいか長身のわりに威圧感はなく、そばにいるのになんの不快さもない。



 教室に向かう途中、知らずにそのペースにはまっていたオレは、気づけば自然な態度で接していた。




「結城と仲良くしてるウメちゃん見て、ずっと羨ましいと思ってたんだ。俺と友達になってくれないか?」




 会話が一瞬だけ途切れた絶妙なタイミングで、筒井はそう告げてきた。



 とっさに、オレは卑怯だと叫びそうになった。
 


 日本人特有の断れないお願いのしかただが、なにもかも計算尽くのようにも感じてしまう。




「オレなんかと仲良くしても、筒井が得することないけど?」




「友達になんのに、損得は関係ないだろ? 仲良くなりたいと思ったから友達になる。それだけでいいだろ?」




 オレの卑屈な考えなど一蹴するように、筒井は簡単に言ってのけた。



 それがあたりまえなんだと、まっすぐでうそのない眼差しがオレの心に突き刺さる。




「さっきも阿久津に迷惑してたみたいだしさ。俺が一緒にいれば、壁ぐらいにはなるよ?」




 ん? 壁だって?



 損得じゃないと言われたにも関わらず、オレの頭の中では目まぐるしく損得勘定がされる。



 筒井が変態よけの壁になってくれる?




(それ……いいかもしれない)




 これであいつの呪いから解放されるのかと思うと、勝手に頬が緩んできてしまう。



 どう天秤にかけても、多少我慢して友達ごっこをしたほうがましだ。



 あとはさり気なく目立たない努力をしていけばいい。



 筒井だってすぐに飽きるに決まってんだ。



 答えを待っている筒井に、オレは初めて笑顔を向ける。




「オレでよければ……よろしくな」




 友達をつくるのなんて何年ぶりだろう。



 オレの打算的な考えなど知るよしもなく、筒井も嬉しそうな笑みを返してきた。










To be continued...next
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