Do you〜?

6話
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【数年ぶりに友達ができた日】







「ちょっとー! どうなってんの? どうなってんのよー!」




(来ると思った……)




 休み時間に入ったとほぼ同時に、戸村が髪を振り乱して保健室に飛び込んできた。



 もっと外見気にしようよ……



 女の子なんだからさーって、オレが言えることじゃないな。




「なにあれなにあれなにあれなにあれ、なーにーあーれー! キーッ!」




「こら、保健室で奇声発しないの」




 さっき戻ってきた養護教諭に注意を受けているが、そんなのはお構いなしだ。



 あいつは先生と入れ替えに出て行った。



 オレはそろそろ教室に戻ろうかと思ってたところだ。




「やっぱりノッチ、皇帝となんかあるんだ!?」




「なんもないよ。なあ、阿久津讓って、そんな有名なの? そもそもオレ知らなかったんだけど」




 ぼそぼそと話しかけると、戸村は一瞬だけ意外そうに目を瞠る。



 しかしすぐ直後、瞳の奥がキランと光るのをオレは目撃してしまった。



 聞く相手間違えたかもしれない。



 他に聞ける相手なんていないけどさ。




「ずっと海外にいたからねー。興味なければ知らないかもね」




 生まれこそ日本ではあるが、これまでほとんど海外で暮らしていたらしい。



 モデルは子供の頃からやっていて、本格的に業界入りしたのが十二歳。



 それから経験と実績を積み上げて、十五歳からはショーモデルをメインに活動していたようだ。



 だから日本のテレビや雑誌には、出ることがほとんどなかったらしい。




「でも噂だけなら、日本でも賑わってたと思うけど?」




「ゴシップネタとか興味ないから」




 言ったらムッとした顔をされた。
 



「樫澤と言えば?」




 なんだいきなり?




「総合商社?」




 とりあえず連想ゲームをするように、思いついたことを答えてみる。



 樫澤とは日本最大の総合商社だ。



 自動車から食品、金融やテクノロジーまで。他にも不動産、建設、化学品、機械、繊維、それからー……等々。



 はっきり言って、手がけてる事業を全部把握するのも難しいほどだ。




「阿久津くんの母方の祖父が樫澤商事の会長、ちなみに父親は貿易関係の子会社の社長」




「は?」




 なんか聞いてはいけなかったような気がする。



 やばい。庶民のオレがどう頑張っても太刀打ちできる相手じゃない。



 うっかり悪口を言ってしまっただけで、この世から抹殺されてしまうレベルだ。




「公にはしてなかったけど、二年くらい前――ちょうど大きなショーに出始めた頃ね。どこからか漏れたみたい。それがモデル辞めるきっかけになったのかも」




 へ、へー。



 上流階級の人間も大変だな。



 よし、絶対にもう関わらないぞ。




「ここだってそこそこの金持ち校だけど、ホンモノがいる場所じゃないよねー」




 ほんと不思議だと言って、戸村は笑う。



 オレは笑えない。



 なぜそんな露ほどの確率で、あんなやつと出会ってしまったんだろう。



 本来ならオレたちは、交わることのない二本の平行線だったのに……。








 
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