Do you〜?

4話
3ページ/3ページ

 





 こんな変態相手にひるむなんて、なんて不甲斐ないんだ。




(……あっ?)




 しかし、その視線はオレではなく、周りで騒ぐ女子たちを睨むように向けられていた。



 オレの代わりに、彼女たちが押し黙る。



 自分が怒鳴られたのはオレのせいだとでも言うように、ジロッと睨まれてしまった。



 なぜだ。



 腑に落ちない。




「おい、ちょっと……嫌がってんじゃん。そんな強引な親切の押し売りならやめろよ」




 またそこに正義の味方のごとく、筒井が助けに入った。




「なんなら俺がおぶっていこうか?」




「結構だ。ここは僕に任せてくれ」




「でも……」




 生粋の日本人である筒井はあまり押しが強くないらしく、しぶしぶではあるが、呆気なく引いてしまった。



 その頃には、オレは顔を上げることもできなくなっていた。



 うつむいて、生きる屍のようにうつろな瞳を揺らす。



 視界の端で、戸村が興奮気味にこちらを見ている様子がわかった。



 間違いなくこの状況を楽しんでる。




(くっそ〜! 絶対に許さねえからな、この変態野郎!)




 憎しみと嫉妬の込められたら目に見送られ、マッチョは軽々オレを肩に担いで校舎に向かった。



 なんつう上腕筋してんだよ!
 





 ――ゴンッ!




「んがっ!」




 校舎内に入ろうとした瞬間、ものすごい音があたり一面に響いた。



 頭をぶつけた弾みで、カシャンと黒縁眼鏡が地面に落ちる。



 そりゃあそうだよ。



 ぶつかるに決まってるじゃないか。



 3mに近い位置にオレの頭あんだぞ。




「Sorry」




「う、うわっ!」




 軽く言ってストンと肩から落とされたオレの身体は、やつの腕の中に収まった。



 一度も床に降ろさないまま、横向きに抱き直されてしまう。




 いや、



 いやいやいやいや。




 違うだろ。おかしいだろ。頭いかれてんのか貴様。




(最悪だ……)




 お姫様抱っこって……



 マジでありえない。




「あ、眼鏡!」




 構わず歩調を進めようとする男を、オレはすかさず止める。



 これがないと、本当に困るんだ。




「君には必要ないものではないの?」




「…………」




 そういえば、あの時オレは変装をしていなかった。



 なんでこいつはオレを認識できたんだ?




「いいから拾え……それより降ろせよ」




 そんなことはどうでもいい。いまはこの状況をなんとかするのが先だ。



 変態マッチョ野郎はオレを抱いたまま、無言で眼鏡を拾い上げる。



 けっきょくなにをどう足掻いても、オレが解放されることはなかった。











To be continued...next
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ