Do you〜?
□4話
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しかしながら、悠長にそんなことを考えてる時間はなかったらしい。
(げっ!)
あいつだ。あの変態がこっちに来る。
猪のように脇目もふらず突っ込んでくる。
顔はマジだし、目とか据わってて超然に気持ち悪い。
(早く逃げ……あっ)
――ま、まずい。立てない。
早く逃げなきゃいけないと思うのに、身体がオレの言うことをきいてくれない。
捻った足が痛くて動けないのだ。
(ぎゃっ、こっち来んなよ!)
来んな来んな来んな来んな来んな来んな来んな来んな――。
マジでこっちに来るんじゃねえ!
「ひぃ――!」
目前まで迫ったマッチョに、オレは不覚にも腰を抜かしてしまった。
「起きれるかい?」
「なななななんだよ!」
手を差し伸べられて、オレは尻で後退る。
見るだけに飽きたらず接触してくるなんて、いったいなに考えてんだ。
怯えた眼差しを向けると、変態野郎はなにを思ったのか、オレの身体を抱き寄せて、起きあがらせようとしてきた。
「ちょっ、やめ……離せよ!」
触られるだけでおぞましく、鳥肌が立つ。
その手を振り払おうとするのに、分厚い筋肉に覆われた身体はびくともしない。
それを見ていた女子たちの輪から、悲鳴の声とブーイングが沸き起こった。
「讓様、そんなのに触ったら汚れます!」
「ちょっとあんたなにやってんのよ! 阿久津さんから離れなさいよ!」
知るか! オレは被害者なんだよ!
変態に襲われてる最中なんだよ!
「うわぁっ!」
だれか助けてくれと思っていたら、肩に座るように担ぎ上げられた。
肩車ではなく、片方の肩に座らされてるのだ。
え? なにこの絵面?
なんだこれは……
なんだよ、この状況。どうなってんだよ。
おかしい。どう考えてもおかしい。おかしすぎるだろ。
「お、降ろせよ」
つうか、高すぎてめちゃくちゃ怖いんだけど!
(くそ馬鹿力めっ!)
暴れたら落ちてケガしそうだし、オレは見下ろす位置にある漆黒の髪を思いっきり掴んで、降ろすように訴える。
「Shut up!」
「――っ」
いきなりの怒声に驚いて、オレは全身を竦みあがらせてしまった。
「はあっ!?」
なんだよ。いきなりでかい声出すなよ。
つかなにビビってんだよ、オレ。