恋愛ゲーム

□『リクエスト』
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―灼熱ダイブ―
※リクエスト長編、王子視点。


 目が合った瞬間から好きだった。
 どんな卑怯な手を使っても、手に入れたいと思った。一緒に生きたいと思った。
 願いが叶ったら、今度は手放せなくなった。
 マイナスな感情はマイナスを呼ぶ。自分じゃどうにもできない。よくないって、わかってる。
 それでも、だれかに奪われるくらいなら、いっそ――僕と一緒に死んでくれ。




「高橋君、夏休みの予定はどうするの?」

 僕は旅行雑誌を広げながら、パズル系のゲームをしている高橋君に声をかける。

「あー、お盆に一回家に帰んなきゃな……」

 ちゃんと聞いてるのか聞いていないのか、高橋君はだるそうに答える。
 ふたりの休みは共に一週間。帰省する時間を差し引いても、まだ数日余裕はある。

「残った休みは、僕と海に行かない? まだ連れて行ってない別荘があるし」

「うーん、なんでもいいや」

「ほんと!? じゃあさっそく準備しなきゃ」

 高橋君からオッケーが出て、僕は浮かれ気分であれこれ予定を立て始めた。
 高橋君の呆れたようなため息が聞こえる。

「ガキかよおまえ……海パン忘れんなよ」

「もちろん。高橋君は真っ赤なビキニかな?」

「………」

 あれ、無言? 冗談だったのに。
 震える肩。テレビの画面には『Game over』の文字。

(やば……っ、逃げなきゃ!)

 その数秒後、部屋には僕の悲鳴が響いていた。
 もう、乱暴者なんだからぁ〜。
 
 


 ――見渡せば青い空。青い海。それよりもっと色鮮やかな、ブルーの海パン姿の高橋君。
 学生時代に比べて、少し白くなった肌。今日は思う存分焼くといい。
 脱がせたら、そこだけ日焼けしてなくて、生唾ゴクリ……なんてね。

「王子ー! なにキモい顔してんだよ! 早く来いよ」

 僕の妄想を打ち砕くように、高橋君の大声が響いた。

(キモいって……)

 ただ、君のことを妄想して、うっとりしてただけなのに。

「先に泳いでるからな」

「あっ、待って! 準備運動が先……」

「するかよ、バーカ」

 都心から少し離れたリゾート地帯。
 限られた人間しか利用できないここは、ひとの数もまばらだ。
 当然だよね。高橋君のあんな素敵な姿、できれば誰にも見られたくないし。

「王子王子!」

 行ったと思ったら、高橋君が戻ってきた。
 僕を迎えに来た……ってわけじゃないだろうけど。

「なんか、テレビで見たことあるようなやついっぱいいんだけど!」

「ああ、いるかもね」

「なんなんだよ、ここ」

 そんなことはどうでもいいよ。僕たちは、僕たちの時間を楽しもう。

「高橋君、よそ見してると置いてくよ」

「はぁっ!?」

 僕は灼熱の太陽に向かって、白い砂浜を駆け出す。
 胸が弾む。君さえいれば、どこにいたって僕にとっては楽園だ。
 


 そろそろ出ようかって時、僕たちは数人の女の子に囲まれてしまった。
 なんかのパーティーで見かけた顔だ。そっちもそれを憶えていたんだろう。

(……迷惑だな)

 念願だった水のかけ合いっこはできたけど、まだ波打際での、

『僕を捕まえてごらん』

『待てー』

『うふふ』

『あはは』

 っていうのをやってない。
 ふたりの時間を邪魔するなんて許せない。

「へー、そうなんだ。じゃあ、俺たちも行こうかな」

「やった。六時に待ち合わせね」

 って、なに勝手に約束してるんだよ!

「高橋君!」

「ああ、王子。夏祭りだってよ。おまえも行くだろ?」

 行く、行くよ! でも高橋君とふたりでだ。
 なんで、明らかに僕狙いの女の子たちなんかと仲良くしてんだよ。

「王子だってー」

「家来かなんかなのかしらー」

 クスクスと笑う声が癇に障る。
 それよりも、僕が気になったのは……。

「無理言ってゴメンね。みんな強引だから」

「いいんだよ、ユウカちゃん」

「本当にありがとう。じゃあね、和人君」

 その中にひとり、高橋君狙いが混ざってたということ。
 しかも、なんで名前で呼び合ってるわけ?
 女の子に甘いのは知ってるけど、これはありえないだろ。
 
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