Rアール

□R番外編
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※最終話以降のお話。新妻マナ、お寝坊しちゃってさあ大変(笑)

【たまには寝坊したい時もある】


 僕もリューク様も今日はお休み。
 張り切ってご飯を作ろうとか、どっかに出掛けようとか、色々計画していたんだけど……。


「――い、起きろ。いつまで寝てるんだ」

 不機嫌なリューク様の声が聞こえてくる。
 だけど僕はまだ幸せな夢の中で、身体は起きることを拒絶していた。

「いい加減にしろ!」

「んっ……!?」

 呆れきったため息と、リューク様の匂い。意識した瞬間息ができなくなってしまい、僕はパチッと目を開けた。

(なになになに!?)

 途端に僕の瞳に至近距離にあるリューク様の顔が飛び込んできて、心臓が飛び出そうなくらい驚いてしまう。

「リューク様? あっ、あぁ……んっ」

 唇を重ねられて、息ができなかったのはキスをされてたせいだと知る。
 そのままキスは深いものになり、お互いの唾液が飲み込めなくなるくらい続けられた。

「リューク様、朝から激しすぎですよ……」

 顔を真っ赤にして見上げると、リューク様はふいっと顔を背けて、ベッドから離れてしまう。

(あれ? まさか、怒らせちゃった……?)

 せっかくの休みだというのに、リューク様の態度は素っ気ない。
 思わず不満を口にしそうになって、僕は思いとどまる。どんなに対等な位置にいさせてもらっても、リューク様に優先権があるのは変わらないのだ。
 
「あっ!」

 リューク様の後を追おうとした僕は、その腕の中の存在に気づき、思わず大きな声を上げてしまった。

「ミント!? わあ、どうしたんですか? や〜ん、しばらく見ないうちにまるまる太って〜」

 リューク様が抱いているのは、間違いなくミントだ。
 僕は嬉しさのあまり、リューク様の腕の中からミントを奪い取り、抱き上げる。

「うるさいな」

「だって、ミントすごい重くなってますよ。リューク様!」

「んなもんわかってる」

 どうしてここにミントがいるのだろうかと考えて、僕はある考えに思い当たる。

(リューク様……僕のためにミントを連れてきてくれたの?)

 僕は感謝の言葉の代わりに、ミントを抱いたままリューク様の頬に口づけた。

「……僕、リューク様の子供が欲しかったな」

 叶わない願いをつぶやいて、僕はうつむく。

(リューク様の子供ならきっと可愛いのに……)

 ミントの成長がこんなに嬉しいように、リューク様の子供の成長を見守るのも幸せだろう。
 だからといって、リューク様が他の女の人と子供を作るのは、今の僕には耐えられない。
 そして、リューク様の子供を授かれない自分が悲しい。

「なんだ? 子作りがしたいのか?」

「あっ……」

 黙って唇を噛んでいたら、リューク様にベッドに突き飛ばされた。
 僕の下敷きになったミントが、怒って逃げていくのを見届けて、僕は戸惑いがちにリューク様を見上げる。

「子供が欲しいんだろ? だったら、俺がくれてやるよ」

 むちゃくちゃなことを言って、リューク様は僕の服を脱がせていく。

(そんなの、絶対に無理なのに)

 けれど、リューク様のその優しさが僕は嬉しかった。

「あっ、あんっ」

 せっかくの休みをいつもと同じようにすごす。身体も心も裸になって、肌を合わせてお互いの存在を確かめ合う。
 こんなに幸せで、本当にいいのだろうか……。

「マナ――子供ができでも、俺はお前以上に愛せる自信はない。それでも欲しいと思うか?」

「んっ……リューク様、それは僕も同じです」

 だったらずっと、二人だけで生きて行くぞ――そう囁くリューク様の言葉は、僕の曇った心を瞬く間に快晴にしてしまった。



 そして……

「わぁ〜ん、ミントごめんね。お願いだから出てきて!」

 ミントをほっぽって、リューク様と愛を育んでしまった僕は、棚の下の隙間を覗きながら焦った声を上げていた。
 ミントが拗ねて、棚の下から出てこなくなってしまったのだ。

「あっ、リューク様!」

 それなのに、リューク様は手を貸してくれるどころか、一人でさっさと逃げてしまう。
 無責任すぎるリューク様の行動に、僕は内心腹を立てていた。
 そして数時間後、ようやくミントを捕まえることに成功し、僕はミントを抱きながら思う。

(僕にもリューク様にも子育ては無理だ)

 だけど、流石にリューク様の態度には呆れた。これが自分の子供だったとしても、同じことをするんじゃないだろうか。

「もう、戻って来たら説教してやるんだから!」

 僕が宣言すると、ミントも賛同したようにミャーと鳴いた。
 その頃――中庭では、家庭に居場所がないお父さんのように、肩を落とした情けないリューク様の姿が目撃されていたらしい。




終わり
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