Rアール
□R(5)
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41話.謹慎
今回の事件の逮捕者数――主犯格二名、幹部十五名。以上十七名。
罪名――国王襲撃及び監禁、殺人未遂。
「もっと叩けば、まだ罪は増えるでしょう」
セバスさんの声に、僕は顔を上げる。
この事件は解決したかに見えるだろうが、まだ肝心なことはわかっていない。そう、僕の両親のことだ。
「罪の重さはそれぞれ異なりますが、最低でも十年の禁固刑です」
リューク様を襲った犯人の罪が最も重い。けれど、数名既に命を落としていて、あの日を明細に証言できる人間は一人もいなかった。
主犯格である二人は、現在病院の中だ。
「後のことはお前に任せる。行くぞ、マナ」
「はい」
突然立ち上がり、会議室を出ようとするリューク様の後を僕は追いかける。
「マナ様、お待ちを」
しかしセバスさんに呼び止められ、一旦足を止めた。
「シオン氏がマナ様に謝りたいと、申しております」
「でも……」
僕は戸惑い、リューク様を見やる。
「要件だけ伝えろ。面会はさせない」
「左様ですか」
この事件は、数多くの傷を残した。
もちろん僕にもだけれど、リューク様にもなんらかの影響を及ぼしたように思えてならない。
「彼は私に――」
僕のピアノを聴いた時に、自分の間違いに気づいたと。その想いの深さに、感動したのだと。
涙ながらにシオンさんが語ったのだと、セバスさんは言った。
「そして二度と、マナ様と陛下と引き離してはならないと、そう仰れていました」
シオンさんの目に、僕とリューク様の姿がどう映ったかわからない。
しかし、僕がリューク様を想う気持ちが、誰かの心を救えたのだとしたら、僕はただの悪の存在ではなかったのだとそう思える。
「それと、マナ様の両親について……」
セバスさんは一度言葉を切り、リューク様の顔色を窺う。
「続けろ」
素っ気なくではあるがリューク様は続く言葉を承諾した。
「組織と二人は関係ないそうです。自分達が、勝手に崇拝してただけであり、起こそうとしていた反乱は違うものだったのだと」
シオンさんは、なぜそんなことを言ったのだろう。
真実がどうであれ、僕の両親が罪を犯し、犯そうとしていることには変わりないのに。
「気に病むのはわかりますが、事件が早急に解決できたのはマナ様のお陰です。もっと自分の力を信用してください」
「はい」
僕は平気な顔で頷く。しかし、声はわずかに震えていた。
「僕は……あの時、本気で死んでもいい。そう思いました」
僕はリューク様に寄り添い、本心をさらけ出していた。
あの時の決意を、リューク様に知ってもらうためだ。
「だけど今……こうしていると、生きててよかったと心から思います」
誰かに言われたからじゃない。僕は二度と、リューク様と離れない。
「そろそろ、あれの時期だな」
しかし、リューク様はなにも言ってはくれず、震える僕の身体をそっと抱き締めるだけだった。
(そうだ……祭り……)
リューク様の気持ちを想い、僕はそれ以上の言葉を噤んだ。
「今年は、ミューやケントに頑張ってもらいますよ」
だから、リューク様の側にずっといられる。そう告げる。
色々な事件のせいで蔑ろにしてしまったが、街では既に祭りに向けて盛り上がりを見せているだろう。
「お前には、別の仕事をさせる」
意地悪な瞳で見下ろされ、僕は眉を寄せて唇を尖らせる。小さな反抗。
「拗ねるな。今年はずっと傍にいてやるから」
「んっ……」
リューク様はふっと微笑むと、僕の尖らせた唇に軽くチュッと口づけてくる。
その不意打ちに、僕は不覚にも頬を赤くしてしまった。