Do you〜?
□3話
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【早くもピンチ到来か】
「ちょっとちょっと、あなたが結城乃亜? 学年一位とかすごいじゃん」
休み時間に入ると、隣の席の女子が遠慮会釈もなく話しかけてきた。
どうせいつかバレることだったが、けっきょく自己紹介とかさせられて名前バレしてしまったのだ。
正直なところ、あまり話しかけてきてほしくない。
まあ、初日くらいはしょうがないし、我慢するしかないけどな。
「乃亜って、ノアの方舟からきてるとかー? 可愛い名前だよね」
名前負けしてるって言いたいんだろう。
父親が発音しやすい名前にしただけで、そんな由来などは皆無だ。
そもそも男が“ノア”って名前でも、べつにおかしいことじゃない。
間違ったイメージを持ってる日本人のほうがおかしいんだ。
どうせすぐオレは教室でも空気みたいな存在になる。
少しの辛抱だ。
いまはなにを言われたって我慢してればいいだけだ。
「あたしは戸村小梅。ウメちゃんて呼んでいいから」
小梅なんてずいぶんと古風な名前だな。
地味でうらやましい限りだ。
ウメちゃんと呼ぶことはないだろうけど。
「あたし去年3組だったんだけど、そっちは?」
返事をしないオレを気にするわけでもなく、戸村は平然と話しかけてくる。
若干うざい。
相変わらず注がれ続けてる視線も、うざくてたまらない。
あいつは数人の女子に囲まれて素っ気ない態度であしらってるが、飽きずにオレのことを見ている。
「せっかく同じクラスで席も隣同士になったんだから、仲良くしようよ。えっと、ノアだから……ノッチでいいよね?」
うわ、ダッセ……どこらへんがいいんだよ。
理解不能なんだけど。
「あたしね、人間観察が大好きなんだよねー。今年のクラスは面白そうなのいっぱいで嬉しいわ」
「へー。そうなんだ」
純然たる棒読みだ。
ハイハイ。勝手にしてください。
どうぞお好きに。
オレに構ってくんのも地味で冴えない人間が珍しいだけなんだろ?
こいつ、こんなんで頭いいんだー?
みたいな。
だからテストで一番とかとりたくないんだよ。
オレは目立ちたくなんてないのに。
「なんだ、声も可愛いっていうか綺麗じゃん。もっとしゃべってよ」
やだよ。
にしても、この話しかけるなオーラが見えてないのか?
オレまだ目すら合わせてないぞ?
普通だったらここで引き下がるはずなんだけどな。
おかしいな。なんか調子狂うんだよ。