Do you〜?
□8話
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【学校のカイダン】
これからみなさんに、とっておきの怖い話をしてあげよう。
本当に怖いから、覚悟を決めて聞いてくれ。
その日――オレは登校してから、まず自分用に割り当てられたロッカーに向かったんだ。
そうだな、高さは2メートル弱、幅は30センチってところか。
もちろん中には仕切りがされていて、オレが置きっぱなしにしている体操服や私物やら、それ以外にも参考書の類なんかが入ってるんだ。
ほかのなにかが入り込む余地なんて、ないはずだった。
けれどなぜか薄気味悪いような、嫌な予感は最初からしていた。
オレは恐る恐る扉に手を伸ばす。指先がわずかに震えていたが、勇気を振り絞った。
そして思いきって扉を開けたら――
そこには……
なんと……
恐ろしいことに、変態マッチョ野郎が挟まっていたんだ。
ウソじゃないからもう一度言うぞ? ここはすごく重要なところだ。
オレが使っているロッカーの中に、マッチョがぎゅうぎゅうの状態で入っていたんだ。
オレは言葉を失った。夢でも見ているのかと、我が目を疑った。
思わず扉を乱暴に閉めて、ここまで逃げてきたけど……。
(あれってオレにしか見えない妖怪とかだったのかな?)
そう、その日とはじつは今日の話――それもいまさっきの話だ。
あれから、オレにつきまとっていたストーカーからの被害はなくなっていた。
ああ、間違った。それはただのオレの願望だ。実際はなにも変わってなんていない。
だって、
ロッカーの中で変態に待ち伏せされるとか、尋常な事態じゃないだろ?
(真面目に寺に行ってお祓いしてもらって、御札ももらってくるか……)
悪霊退散の札はマッチョにも有効だろうか。
痛む頭を押さえて、オレは教室に入った。
ロッカーの中に一時限目に使う参考書があったが、それは今日はあきらめよう。
まともに授業なんか受けなくたって、どうせオレはそれなりの成績を残せるんだから。
(えっと、課題は昨日のうちに終わらせて机の中だっけ?)
「確か……――っ!?」
な、なななななななななななななんだ!?
机の中を覗き込んだオレは見てはいけないものを目にしてしまい、ガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。
(いやいや、もう一度確認してみ……ぎゃあぁぁぁっ!!)
つ、机の下になんかいたぞ。
おでこに赤いコブみたいなのをつくった、マッチョらしき生物がオレの机の下にいた。
だからあんときすごい音がしたのか……じゃない!
「おはよう。さっきLockerの扉で額をぶつけてしまって、たんこぶになってしまったんだ。撫でてくれないか?」
「ひぃっ!」
「君が撫でてくれたら治るかもしれないよ?」
ぬるぬるっと這い出てきたそれは、オレに向かって巧みに言語を操って話しかけてきた。
てか、普通にそんなとこから出てきてんじゃねえよ!
どうしてだれも、この異常な事態を疑問に思わないんだ……
やっぱり、これはオレにしか見えていないのだろうか……。