Do you〜?
□7話
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【激情の矛と友情の盾】
ここ数日間、執拗にストーカー行為をされている。
それは高校生になってから初めて、オレに友達ができてからのことだ。
以前より色濃く、悪意すら感じる視線がつきまとうようになったのは、できたばかりの友人と、まだぎこちない会話をしているときだった。
クラスの連中がオレと筒井が一緒にいる姿を目にしても、その視線は綺麗にオレだけを避けて流れていく。
オレが恐れていた周りからの反応は、さほど心配するようなものではなかった。
それは人好きする筒井の性格のおかげだろう。
筒井だったら、べつにだれと仲良くしてようと気にならないし、おかしいと疑問を感じることもない。そんな雰囲気があるのだ。
だからオレは相変わらず空気だ。安心して透明人間でいられた。
「結城って、なんかいまハマってることとかあるの?」
少しでも会話が途切れそうになると、必ず筒井から新たなネタが提供される。
そんな素振りは見せないが、オレが答えるだけでいいように気を回してるのかもしれない。
「べつに……あっ、でもコンビニで売ってるアイス全部食って制覇してみたりとか、くだんないことならやってる」
「マジで? 俺もアイス好きなんだよ。部活終わりとか、無性に食いたくなるんだよな」
「オレなんて買いだめして毎日食ってる」
「だったら、あれもう食った? ゴリゴリくんシリーズの新商品」
「桜餅味?」
「そう! それそれ」
「あれは、まあまあ美味しかったな――ん?」
「あれは、くそマズかった――ん?」
正反対の感想を同時に発言してしまい、思わず筒井と目を合わせて吹き出した。
「あー、ウケる。結城って味覚おかしんじゃないか?」
「筒井だって、味音痴だろー」
しばらくぶりに大笑いしたせいか、腹が引き攣れたように痛い。
(あれ? なんでオレ、こんなに笑ってんだ?)
自分に得があるという理由で友達ごっこを始めたが、いまはそんなことは関係なく、ただ筒井と一緒にいるのが楽しいと思う。
くだらないことが楽しいなんてこと、すっかり忘れていた。
それを思い出させたのは筒井だ。
横に並ぶ相手は違うけれど、まるで昔に戻ったような気さえする。
気持ちが過去に呼び戻されるように、毎日笑って過ごしていた自分が帰ってくる。
(なんか、めちゃくちゃ楽しい――えっ?)
再び込み上げてくる笑みをかみ殺してうつむくと、横顔に強烈な視線を感じた。
顔を上げると、そこには暗い表情で立ち尽くしているあいつの姿があった。
(……讓?)
目が合った途端、顔を背けて静かに立ち去ってしまう。
(どうしたんだ?)
なにか様子がおかしかった。
いや、頭がおかしいのはいつものことだから、それとは違う意味で。
傷ついてるような顔に見えたが、どうしてあんな表情をしていたのだろうか。