Do you〜?
□9話
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車が走ること30分。連れてこられたのは、城みたいなでっかい屋敷。
興味ないからうらやましいとか思わないけど、こいつがホンモノなんだって目の当たりにして、若干動揺してはいる。
まあ、ホンモノの変態ってのはとっくに知ってたけど。
そしてパーティー会場に通されたオレは、目の前の光景に絶句した。
(なんだよ、これ……)
本当に誰もいない。それどころか、広い空間に二人ぶんの席の準備しかされてなかった。
なんだか異様な光景にも見える。
こんな広い屋敷に、御曹司がぼっちで誕生会とか……。
ポツン感がハンパなくて、たまらない気持ちにさせられてしまう。
思わず目には涙が滲んで、肩が小刻みに震えていた。
「そんなに笑いをこらえて、なにか楽しいことでもあったのかい?」
「プ、ププ……マジで傑作だと思って」
「気に入ってくれたならよかったよ」
いやいや、本当にひとりとはな。家族や強引に押しかけてくるやつぐらいいてもおかしくないのに。
やっぱりこいつ嫌われてるのかもな。
「ブーッ! アハハハ! ハッピーバースデー。笑わせてくれてありがとう」
「Wow!」
とうとう吹き出してしまったら、やつは急に感極まったようにオーバーなリアクションをしている。
自分でもなんでお祝いをしてやろうと思ったのかわからないけど、なんか愉快すぎてさ。
「やっと君の笑顔が見れた。最高のBirthdayだよ……ありがとう」
あ、ごめん。笑顔じゃなくて嘲笑っただけなんだけど。
やばい……なんか誤解させちまったかも。
オレが焦っているうちに、やつはおもむろに上等そうなタキシードを脱ぎ始めた。
「お礼に、僕の筋肉を見せてあげよう。最近は僧帽筋を頑張って鍛えているんだ。ぜひ君に見せてあげたい」
「いらねえよ! なに脱いでんだよ変態!」
胸ぐらを掴み上げてやろうと思ったがすでに上半身裸で、オレは勢いでやつのズボンのベルトを掴んでしまった。
自分がしでかしてしまったことに気づかないまま、オレは露出狂の変態にきつい眼差しを送る。
「ん? そうか! 下を脱がないからいけなかったんだね! だからいつも不満そうだったのか」
ふあっ!?
「ち、ちげーよ!」
パッとベルトから手を離したが、後の祭り。
最悪なことに、変態野郎は下も脱ぐ気満々だ。
「じつは大臀筋もなかなかSexyに仕上がってるんだよ」
ま、まさか下着まで脱ぐつもりじゃないだろうな!?
「讓様――ダミーで用意した会場が偽物だと皆様気づかれたようで、こちらにいま向かわれてるようです」
絶望感に見舞われていたら、慌てふためいた年配の男が現れた。
にこやかだった変態野郎は、途端に冷酷な表情を浮かべる。
「そんなものは、早急に対処しろ」
「ですが、人数が多すぎるようで……」
「僕はやれと言っているんだ。Noah……君は気にしなくてもいいからね。邪魔が入ると困るから、僕の部屋に案内しよう」
「き、貴様は……」
すっかり騙されたオレも悪いが……
ひとの良心につけ込もうなんて、最低だ。
「待ってくれ! ちゃんと邪魔者は追い払うから! 僕の大臀筋を――」
うるせえ、ボケ!
今度の今度は、今度こそもう本当に、なにがなんでも絶対におまえなんか知らねえ!
てか、どうやって帰ればいいんだよー!!?
To be continued...