捧ゲ物

□開戦時刻は、午前二時。
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「なぁ、吉田松陽って知ってるか」

「誰だ!その様な者は知らん!!」

「だよな。てめー等が莫大な権力をこの地球で振るう為に斬り捨てた唯の踏み台だもんな。唯の踏み台でしか無い死人だもんな」


深夜、午前二時をとっくに回っている頃。
江戸は大火に見舞われた。
外には警察機構と刀を交える攘夷志士と鬼兵隊。城内には、銀時、高杉、桂の三人。


「天導衆か。大した事はねぇんだなァ。結局は権力を大いに振るっているだけってか。ま、実際に戦うのは、奈落だけって事か」


三人を取り囲むのは、奈落の者達と天導衆の者の死体の山。その山の中には、朧の姿もあった。


「後は、貴様唯一人だ」

「我々にこのような事をして、唯じゃ済まさせぬぞ!!」


残った天導衆の一人は傷を負いながらも、船の方へと向かう。
しかし、片足に傷を負っている様で、片足を引きずりながら必死に走る。


「オイオイ、無駄だぜ。喩えてめーが宇宙に逃げて増援を引っさげてこようともな、こちとら宇宙にも味方が居るんだ。てめーは此処で、安らかに眠ってな」


銀時は添うとだけ云うと、刀を横に薙いだ。
床に転がるは一つの首。


「終わった、か」

「一先ずな。コイツの首を奴等にさらす事で、動きを止める」


高杉は男の首を持ち、城外に出る。
二人も高杉に続く。


「天導衆の首は討ち取った!!」


高杉は首を空高くに上げて叫ぶ。
其れを合図に、警察共は攘夷志士達を捕縛しようと動く。
真選組と見廻組は一斉に三人の方へと駆け出す。


「遂に寝返りか?白夜叉さんよぉ」


土方が抜刀して銀時に向かって云う。


「あ?俺が何処に居ようと関係無ェだろ?俺の本来の居場所は此処だった。だから此処に返って来た。唯其れだけだ」


表情一つ変える事無く淡々と云う銀時に、土方は怒りを覚える。


「オイ。チビ、ヅラ。ちと耳貸せや」

「てめぇ、誰がチビだ」

「ヅラじゃない、桂だ」

「善いから」

「善くねぇ!!」


桂は慣れたから蒙善いというカンジで流したが、高杉だけは不服のようだった。
其の為、敵が目の前で抜刀して構えているというのに、銀時に向かって思い切り跳び蹴りをかます。


「いってぇ!!!てめっ、何すんだコノヤロー!!」

「俺はチビじゃねぇ!!訂正しろ!!」

「え、でもさ。本当の事云っただけだしぃ。チビって云ってお前反応したじゃん?ッて事はさ、お前自分がチビって自覚してんじゃねぇの?」

「煩ぇ!!!アイツ等よりも先にお前を先に敲き斬ってやるよ糞天パ!!」

「黙れ、お前も道連れだ!!」

「二人とも止さぬか!!」

「「てめぇは黙ってろ、ヅラ!!!」」

「ヅラじゃない、桂だァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


ぎゃーぎゃーと騒ぎ、何の緊張感も無い三人に、真選組と見廻組は苛立ちを覚えつつもじりじりと距離を縮めて行く。


「だー蒙、続きは後だ」


銀時は面倒臭そうに云うと、二人に耳打ちをし始める。


「善いか?今から暴れるのは結構だが、全員殺すな。動けない程度の致命傷を与えれれば充分だ」

「あん?いっそ皆殺しで善いだろうがよ」

「厭、殺人罪なんざかけられたらたまったもんじゃねぇ。あ、今から来るお客様は皆殺しで善いから」

「厭、蒙殺してるから。さっきの天導衆の首落としたのお前だから」

「兎に角、駄目だ。それから、真選組の一番隊隊長沖田と、見廻組の銃と刀持ってる局長と女は厄介だ。特に女は、奈落三羽の一人だから」


銀時の言葉に二人は頷き、抜刀摺る。
だが、三人は彼等に背を向けた。


「てめぇ、どういうつもりだ!!」

「あ?俺達三人の敵はお前らじゃねぇ。先約が居るんだよ」

「先約?」

「あちらさんだ」


銀時は添う云うと、天守閣目掛けて指を指した。


「アレは...!」

「春雨、宇宙海賊春雨だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


攘夷志士を捕縛しようと奮闘していた警察共が驚いた様に叫ぶ。
天守閣には、春雨の巨大な戦艦が今正に来ていた。


「そういう事だ。幕府の犬に一橋の犬。御前等は向こう行って親指でも咥えて見てなァ」

「母ちゃんの乳の方がいんじゃね?」

「どっちもかわらん」

「厭、大分違うんですけど」


天人が幾ら来ようと関係無い。
彼等は余裕の表情で、マイペースに日常会話をしている。


「なぁ、高杉」

「なんだ」

「お前ってさ、前に春雨と同盟組んだんじゃ無かったけ」

「嗚呼。あの神威とかいう夜兎族の野郎と春雨の提督とかいうアホ共を皆殺しにした時にな。丁度其の時、アイツが馬鹿提督になって春雨の全権を手にしたぜ」

「てことは今来てるの?アイツ」

「恐らくなァ。どうせあの馬鹿の事だ。真っ先にお前を殺しに来るだろうよ」

「ハァ。アイツだけとは色々面倒だからやりたかねぇんだけど...」

「他は俺とヅラで片付けておいてやるよォ」

「ヅラじゃない、桂だ」


彼等が話している事はあまりにもハードで。
警察は皆、何の話をしているのか判らず混乱していた。


「ぎん、ちゃん..」


真選組の後ろから、一つのか細い声が摺る。
銀時は聞き覚えのある声に振り返る。


「銀ちゃん..、神威と戦うアルか...?」

「......」

「厭ヨ。止めてよ、銀ちゃん。アイツと本気でやったら、銀ちゃん死んじゃうヨ!!」


神楽の言葉に、銀時は笑みを浮かべる。


「神楽。大丈夫だから。アイツは、お前の兄ちゃんはきっとお前の処に帰ってくる。絶対に死なせやしねぇ」

「銀ちゃんは?」

「...」

「銀ちゃんも...、帰って来るよネ?」

「....行くぞ」


神楽の言葉を無視し、銀時は歩き出す。
桂と高杉は何も云わず後に続く。


「待って、銀ちゃん!!!」


神楽は泣きながら走り出す。
しかし其れは、沖田の手によって阻まれる。


「離せヨ!!銀ちゃんが死んじゃうヨ!!銀ちゃん!!」


泣きながら神楽はその場に泣き崩れる。
ふと見やれば、彼等は天守閣に向けて走り出していた。






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