短編

□逸れは、安らかな。
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周りが何だか騒がしい。
仲裁に入ろうと声を出そうと思っても声が出ない。
目の前が真っ暗で何も見えない。光を求めて瞼を持ち上げようとしても開かない。
体を動かそうと力を入れる。しかし、それでも体の自由はまだ利かない。
周りの音が次々と耳に入ってくる。


「オイ、お前医者だろ!!?早く。早く銀ちゃんの目を覚まさせろよ!!」
「神楽ちゃん!!落ち着いて!!絶対に銀さんは目を覚ますから!!!其の時迄側に居よう!!!」


神楽が医者に向かって泣き叫ぶ。そんな神楽を、新八が懸命に止める。


「あの、万事屋は今どうなんですか?」


冷静に近藤が医者に尋ねる。


「正直、予断を許せない状態ですね。何度も全身の経穴を毒針で突かれているとなると、此れでは全身に毒が回っている可能性が高いですね。今解毒治療をしていますが、坂田さんは出血が酷すぎる為、解毒治療に体が持つか判りません。なので、輸血をしたいのですが...。誰か血液を提供してくださる方は居ませんか?」


医者の言葉に皆が反応する。


「そんなの決まってるアル!!此処に居る全員、銀ちゃんの為なら血だってあげるヨ!!だって、其れで銀ちゃんが助かるんでしょ!!?」


神楽が泣き続ける。
神楽の言葉に、周りの奴等が其々賛同する。
医者は其れから皆の血液を調べ始める。


「皆さんの中で坂田さんの血液型と一致する方は居ます。チャイナさん。お願い出来るかい?」


神楽は勿論と即答摺る。
其れから、俺の直ぐ側で輸血が始まる。
何故か、俺は痛みなんか感じなかった。
神楽は痛そうに、苦しそうな顔をしているのだろうか。
暫くして、体内に何か入ってくるような感覚がする。どんどん、俺自身の体内に神楽の血液が。大人一人に対して、子供が輸血なんぞして善いものなのか。そんな事をしてしまえば、神楽は倒れてしまう。
そんな事をずっと考えている内に、輸血は終わる。






************






徐々に目の前が明るくなってきた。
嗚呼。今なら瞼を持ち上げる事が出来る。
少しずつ瞼を上げ、光を求める。
初めに視界に入ったのは、見慣れない真っ白い天井だった。


「銀ちゃん!!」


直ぐ横で神楽の声が摺る。
唐突に、横になったままの俺に抱きつく。


「...かぐ、ら..」


何とか声を発する。かろうじで体は動くようで、震えながらも、神楽の頭に右手を添える。


「銀ちゃん、もう痛く無いアルか?血も吐かないあるか?体は動くアルか?」


次々と神楽から問い質される。
喉が枯れてしまって声が上手く発せ無い。その代わりに、神楽の言葉に頷いていく。


「へへ、善かったヨ」


神楽が目に涙を溜めて笑う。
俺は神楽の手に自分の手を重ねる。
其れから、神楽の手のひらに平仮名で文字を書いていく。


『ち、ありがとな』


文字に神楽が少し困惑摺る。


「銀ちゃん、起きてたアルか?」


俺は首を横に振る。


『おきてはないけど、きづいてた」
「逸れ、どういう事アルか?銀ちゃん遂に可笑しくなったネ」
『あとでおぼえとけや、このやろー』
「覚えておける程のスペースが私の頭には無いアル」
『いいから。ほうびやる』
「ひゃっほーい!!」


神楽は一人テンションを上げる。
顔は色味のある白。頬は綺麗なピンク色。本人は至って心配無さそうだった。


「...かぐ、ら。ありがとな..?」


微笑みながら懸命に声を振り絞った。


「うん!」






************






「神楽ちゃん?」


買い物でも済ませたのか。新八は小さな買い物袋を持って病室に入って来た。
其処には、一つのベッドで銀時と神楽が眠っていた。銀時の右腕は神楽を包み、神楽は銀時にピタリと寄り添っている。


「ったく。僕の事も忘れないで欲しいんですけどね」


新八は笑いながら二人の側に寄って一人、眠りに着いた。






end

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笑えない妄想、御免なさいww(orz

鬼燈


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