短編

□逸れは、安らかな。
1ページ/2ページ

 





「約束(ゆびきり)なんざ...、気安くするもんじゃ...ねェな...」


経穴を毒針で突かれ、其の上の戦闘。
最早体はボロボロ。意識も徐々に朦朧として来た。
今にも瞼を閉じてしまいそうな其の時、遠くから名前を呼ぶ声と足音が摺る。


「銀さぁぁん!!」
「銀ちゃん!!眠りにつくのは十年早いアルぅぅぅ!!」


二人の少年少女、新八と神楽が此方へと向かってくる。


「お前等..」
「何ですか?どうかしました?」
「...厭」
「?何かあるなら云ってくださいよ?」


新八と神楽が自分の身を起こす。
多少の痛みは有ったが、力を入れる事が出来ない。二人に身を任せていた。


「痛くないアルか?」
「んー?そりゃお前、痛いに決まってんだろ?」
「まぁ、家に帰ったら姉御がしっかり診ててくれるから。取り敢えず早く帰るアル。何とか云えば、アイツら送ってくれるかもしんないヨ」
「銀さん。姉上に診て貰うのそんなに厭なんですか?てか神楽ちゃん。一応あの人達警察だからパシリみたいな事すると怒られるよ」
「だぁー、俺を挟んで二人共大声出すなや」


それから三人で色々と話す。
途中で眩暈がして止まったりしながらも、何とか地上を足で踏む事が出来た。
下へ行けば、もう真選組や見廻組。月詠や将軍、そよ姫等が待っていた。


「銀時。ぬし、また経穴を..」
「嗚呼。だが、心配ねェ。アイツの急所は貫いた。もう経穴なんぞを突かれる事はあるめェよ」
「だが、今のぬしは立っているのがやっとの筈じゃ。早く手当てをせねば」
「そうだ、な..」


突然視界が歪む。
気付けば、大量の血を吐いていた。底知れぬ鉄の味がする。
流石に立ってはおれず、その場に崩れ落ちる。
新八と神楽は必死に俺を運ぼうと摺る。
其処へ、近藤と土方が前へ出る。


「新八くん、チャイナさん。万事屋は俺達が運ぶ。二人は先に車の方へ行っててくれ」
「近藤さん?いいんですか?」
「嗚呼。怪我人にこのまま帰れとは流石に云えないしな」
「有り難う御座います!じゃ、神楽ちゃん行こっか」
「ウン。じゃ、銀ちゃん行くアルヨ?あと少しの辛抱だからネ?」


神楽は其れだけ云うと、俺を軽々と背負う。
そして、何事も無いかの様にせこせこと歩き始める。


「あの、チャイナさん?万事屋は俺達が運ぶって云ったんだけど..」
「お前等に銀ちゃんはやらないアル。銀ちゃんがこんなにも弱ってるのに、お前等みたいな貧弱な奴が銀ちゃんを運んでたら、銀ちゃんもっと酷くなってしまうアルヨ」
「何をぉぉぉぉぉぉ!!!!」


神楽と近藤が少し喧嘩交じりの話し合いをする。
俺自身、別に神楽でも真選組でも善い。
けど。


「神楽。お前に運んでもらうのは嬉しいけどさ、流石に重いだろ。手、力んでんぞ。オイゴリラ。頼むわ。神楽、先行って待ってろ。直ぐに行くから」


俺の言葉に少し戸惑う神楽だが、大丈夫だと云い聞かせると、神楽は承諾して近藤達に俺を任せて走って行く。


「ハハ、万事屋がこんなにも弱っているとはな」
「何だ、その...云い方。嬉しいのかよ」
「嬉か無いさ。逆に心配だ。さ、早く行こう」


近藤と土方が俺を運ぶ。途中、何度も大量に吐血をしたが、何とか車迄たどり着く。
運転席に近藤。助手席に新八。後部座席には俺を挟むようにして神楽と土方が座る。
座席に座っても、俺は吐血が止まらなかった。


「オイ、大丈夫か!?近藤さん、確かタオル持ってなかったか?」


吐血し続ける俺を見て、神楽はずっと背中を摩る。
近藤のタオルを受け取って、俺は其処に何度も血を吐く。
意識が朦朧とし、だいぶ目の前が暗くなってきた。神楽が。土方が。新八が。近藤が。四人が何処に居るのかがハッキリと判らない。眼を動かしているうち、体の自由が無くなって来た。手にしていたタオルも、手の自由が無くなった事で下に落ちる。
其れでも俺の血は体外へ排出され続ける。


「銀ちゃん!!」


神楽が叫ぶ声が摺る。
其れを耳にした時、俺の意識は其処で途切れた。






.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ