短編
□花酔ひ
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大切なものを護る為ならなんでもしてきた。
喩えこの両手を紅く染めようと、
この両手を厭がられようと、
已める事はない。
周りから疎まれようと、
護り抜いたものから非難を浴びせられようと、
已める事はない。
何故なら。
其れが自分の存在証明だから。
逸れに、
又あの悪夢に取り付かれそうだから。
何が悪い?
何も悪くない。
自分が大切なものを護ることで他人が生かされているのだから。
そんな事を自分に言い聞かせて、
くだらない論理で自分の思考を狂わせて。
少しずつ、少しずつ、正常な思考が無くなって、
「狂い」と言う名の「苦しみ」から、
手を紅く染めていく事が「護る」と言う名の「快楽」へと変わっていく。
徐徐に、徐徐に、
俺は「快楽」という名の狂った思考に溺水する。
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