短編
□Start of Tragedy.
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「いっ!!」
万事屋での仕事を三人でこなしている時の事。
それは真選組屯所の屋根瓦の修理をしていた時。一人の声が屯所に響いた。
何事かと、真選組の隊士等と修理をする二人が声を上げた一人―――坂田銀時の方に皆目を向けた。
当の本人は、右の二の腕をかなり痛めているようで、顔色があまり善くない。汗も少し掻いている。
「銀さん?大丈夫ですか?」
新八が慌てて銀時の元へ駆け寄るも、銀時は左手でそれを制した。
「俺は大丈夫だから、仕事やってて。ちょっと冷やしてくるわ」
そう云うと、銀時は屋根から降りて厠の方へと急ぎ足で向かった。
「新八ぃ、銀ちゃんどうしたアルカ」
「さぁ...。あんなに顔色悪かったら何かあると思うんだけどな」
「あれじゃないアルカ?新八が何時までもダメガネだから、ついに銀ちゃんに嫌われたんだヨ」
「この際メガネ関係無いよね」
二人でがやがや話していると、沖田が屋根の上に上がってきた。
「あれ、沖田さん。どうしました?」
「厭、此処だと寝てても土方さんにバレないんでね。ちとお邪魔するぜぃ」
何故か今日の神楽は大人しく、沖田が来ても特に喧嘩が起こることは無かった。
「.....おい、お前仕事の邪魔アル。早くどっかいけよ。オイ聞いてんのか」
「オイオイ、勘弁しろよ。土方のこんちきしょーから逃げてきたのにこんな所で騒がれちゃばれちまうだろうが」
「ニコチーン!!!!!一人屋根の上で寝てるアルぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
「総悟ぉぉぉぉぉぉ!!!!!てめぇ、何サボってんだぁぁぁぁ!!!!」
「チッ、土方死ね」
「オイ、丸聞こえだわ!!!!」
ワーキャーと賑やかに騒いでいる中で、新八は厠の方をじっと見ていた。
「銀さん、まだかな...」
心配になりつつも、新八は再度仕事を始めた。
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「やっぱな...」
着ていた服を少しだけはだけ、右の二の腕の方へと目をやる。
見覚えのある古傷。出血している訳ではない。しかし、古傷は黒くなり、傷まわりには此れこそ見覚えの無い呪文のようなものが浮き出ている。
「いっつ!!」
突然激痛に襲われる。そのとき傷を見やれば、呪文のようなものは僅かに暗い紫色に光り、少しばかり呪文のようなものが拡大した。
「!!?何だ....、コレ....」
十年程前、戦で戦った魘魅と名乗る天人。
魘魅の姿は呪文のようなものが書かれた包帯と、大きな笠に錫杖という、托鉢僧のような格好。戦った中で一番記憶に残る相手だった。
「なんで今になって出てきやがる...?」
その時、ふと思い出す。
「ナノ..マシン...」
ナノマシン。聞き覚えがある。昔、魘魅と戦う直前に耳にした気がする。だが、確かな内容を覚えていないが微妙に覚えている。
人の体内に寄生するという事と、全身の毛髪から色素が落ち死に至るという事。
これだけ知っていても、対処法が判らない。
恐らく自分が元凶であろう。魘魅と戦って、唯一生き延びた自分。魘魅の呪符に傷を負わされて尚、今此処に自分は居る。
ならば、そのナノマシンは自分の体の中で寄生しているのではないか。
そんな不安に駆られながらも、銀時は一人、これからの対策に頭を悩ませた。
自分が何をすれば、江戸中の人に感染する事無く事態を収められるか。もはや自分一人では何も出来ない状況に陥ってしまう。
未来(さき)の事を考えつつも、大丈夫だと自分に云い聞かせながら、はだけた服を元に戻す。
「さて、仕事するかね」
先行きに大きな不安を抱えながらも、仕事場へと戻って行った。
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それからどれだけの月日が経った事か。
銀時の二の腕の傷から拡大していった呪文のようななんとも云えないものは見る見る打ちに全身へと広がっていった。
誰にも気づかれない為に。
銀時は普段の黒い上下のインナーと白い波紋の入った着物をしまった。
「あれ、銀さん。何でそんな格好しているんですか?」
「ん、たまにはいいかなーなんて」
「そうですか。でも、何だか違和感が...」
「まぁ見慣れてくるから其れまで我慢」
「はい...」
銀時がの服装は、少し青みの掛かった着物。
その着物で大体の所は隠している。
唯、手の甲にも広がるソレは隠しようが無い。
「銀さん。手、怪我でもしたんですか?」
「んあ、まぁちょっとな...」
「消毒とかしておきましょうか」
「厭、いいから。此れくらいは自分でやるから」
明らかに様子が可笑しい銀時に、軽く困惑する新八。
銀時の体に巻かれた包帯は、手の指先までや足の指先まで。首元までしっかりと巻かれていた。
「何かやらかしたんですか」
「いんや。そうたいした事でもねぇよ」
「たいした事無いなら見せてください」
「...たいした事あったわ」
一行に包帯の下を覗かせてくれない。
すると、テレビから1つのニュースが聞こえてきた。
「此方、結野です。私が今居る現場で、全身の毛髪が白い状態で、やせ細り、死因不明の遺体が発見されました。此処だけでは無く、江戸中の色々な所から同じような遺体が発見されています!子供から老人まで。様々な方が遺体として発見されています。原因は今追究しておりますので、テレビの前の皆様、十分に気をつけてください!以上、結野がお送りしました!」
新八は、気味悪いと小さくボヤキながら、掃除をする。
しかし、銀時はテレビの方を向いて硬直している。紅い眼は見開かれ、手を血が滲む程強く握っている。
「銀さん?」
「...」
「銀さんってば」
「!!」
新八の呼び掛けに凄い反応を示した。
この人、何か知っているのかな?
新八は疑念を抱きながらも、初めて耳にするニュースだからそんな事は無いだろうと簡単に頭の隅へとそれを追いやる。
翌日。
新八が万事屋へと赴いた時には、銀時の姿は無く、彼が万事屋へと、かぶき町へと、江戸へと、帰って来る事は決して無かった。
end
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あとがき
劇場版銀魂完結篇ー万事屋よ、永遠なれーの大ヒットを祝して、書かさせていただきました!!
映画、私ガチ泣きしましたね。はい。
もう一度見に行く予定です!!
銀さんと魘魅が戦い始めて、其の後銀さんが魘魅に木刀で一突きした辺りから、魘魅の中は実は未来の銀さんではないかと思い始め、魘魅銀さんが顔の包帯を取って銀さんと話し始めた辺りで目茶苦茶号泣して、隣の知らない人と何故か「泣けますよね!!」と打ち解けてしまった私。厭、これ絶対このシーンは泣けますって!!
私は、もう一度スクリーンで見て、小説読んで、DVDを発売された瞬間に買って永遠に見続けていようかと思います。
最後まで読んでくださり、有り難う御座いました!!
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