†小説†

□未タイトル
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青い髪の少女のところに向かう途中、ふと思い出す。
そうだ、そういえば明日だったな…。

アイツも準備しているのだろう。
…宝石のプリンスのために。
そうだとしたら邪魔をすることになってしまう。
引き返そうとした瞬間アイツのいる城から焦げたにおいがして、俺は考えるまでもなくすぐさま向かった。





「レイン!」

すぐさまアイツの名前を呼ぶ。
しかし、そんな俺とは逆にふわふわとした声が聞こえてきた。

「へぁ〜〜」
「レ、レイン?」
「ふぇっ?あら、シェイドいらっしゃい」

ふわりと微笑むのんきな姫。

「今焦げ臭かったけど、無事か?」
「あ…。そ、それは、バレンタインのチョコレートが何度練習しても焦げちゃって…。うまく溶けないの」
「そうだったのか…って、本番は明日じゃないのか?」
「だ…だいじょーぶ、だいじょーぶ」

困ったように笑うレイン。
絶対大丈夫じゃないな。

「……よし、決めた」
「?」
「お前は危なっかしいからな。俺が手伝ってやる」
「えぇっ!?で、でも…」
「とろとろやってたら完成しないだろ」
「ど、どういう意味よ!」
「ちゃんと渡すんだろ?」
「う…うん」
「このままだと間に合わなくなるぞ?」
「あぅ…」
「だから手伝ってやる。立てるか?」
「あ、ありがとう」

レインに手を差しのべながら、俺の心は言葉とは裏腹にモヤモヤしていた。
本当は間に合わなくても良いとさえ思う。
レインが好意を寄せる相手へのチョコなんて。
だけど、それ以上にレインの笑顔が見たい。
まったくどうしようもないなと、レインに気づかれないようにそっと苦笑した。
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