HSJ[short]
□恵方巻き
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「だーいーちゃんっ♪」
いつも以上に、柔らかい笑顔のいのちゃんが俺を呼ぶ。
俺は素直じゃないから
「なんだよ、変態」
どーしても悪態をついちゃうんだ。
そんな俺でも好きでいてくれる、いのちゃん。
いのちゃんが思ってるより
俺はいのちゃんが大好きだと思う
…言葉にはしないけど。
今日は、たまたまお互い休みで
俺んちで、まったりすることになっていた。
「ねぇ、今日が何の日か大ちゃん知ってる?」
「……? 節分、だろ?」
俺がそう答えると、いのちゃんは満足そうに頷いて
いのちゃんは持っていたビニール袋を俺に差し出す。
「なにこれ? ………あーっ!!恵方巻きじゃんっ」
「豆まきもいいかなーって思ったんだけどさ、片付け大変だし恵方巻きならいいかなって」
そんなことまで気遣ってくれて
いのちゃんは本当にいい人だと思う…
…いい人だから惚れたのだけれど。
「大ちゃん、早く食べようよ」
「おうっ♪ いのちゃん、まじさんきゅー!!」
さっそく食べようと恵方巻きに
手を伸ばすと、いのちゃんに止められた。
「…どしたの?」
「大ちゃん。俺ね、いい食べ方見つけちゃった☆」
………………………
…「あり得ねぇよっ!!///」
まじで信じらんねぇ。
いのちゃん曰く、
『俺がこっちからで、大ちゃんが逆から食べてって
ちゃんと最後まで食べれたら
願いが叶うってゆーのは、どう?
ほら、ポッキーゲームの要領でさ♪』
……………おかしくね!!?←
「はいっ、今からなんにも喋っちゃダメだよ! 願い事は心の中でね☆」
「ちょっ…いのちゃん、まじでやるの、うむっ」
いのちゃんに恵方巻きを突っ込まれたため
仕方なく食べ始める。
でも、いのちゃんも逆サイドから
食べてきてるわけで……
前を向けば、いのちゃんの顔が目の前にあって…
恥ずかしすぎて
俺は目を閉じて、やけくそで
恵方巻きを頬張っていくと
「っ…んぅ」
いつの間にか、いのちゃんの唇に俺の唇が当たっていて。
いわゆるキス。
びっくりして目を開けると
俺の顔を見ているいのちゃんの顔が、すぐそこにあった。
離れようとすると
いのちゃんの左手が俺の頭の後ろにまわる。
そこからまた深いキス。
「んっ…ふぅっ…んん、んぅ///」
「ん……ん、っはぁ」
いのちゃんは俺の頬を両手で包んで
「俺の願い事はね、
だよ」
「っ……/// ばっかじゃねぇの。願い事、口に出してどーすんだ」
(…口に出したら叶わなくなるかもしれないじゃん)
『大ちゃんとずっと一緒にいられますように』
俺も…
『いのちゃんとずっと一緒にいられますように』
って願ってたなんて
それは俺だけの秘密。
恵方巻き END.