Little☆Star 〜小さな星〜

□春の章『古い記憶、新しい出会い』
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 ぶら下げられた無数の提灯の灯りが夜の闇をオレンジ色に照らす。

 神社まで続く石畳の両脇に立ち並んだ屋台は活気に溢れている。
 たこ焼きのソースの香りが食欲を誘い、太古の音が大気を揺らし、笛の音色が心を躍らせる。そう、今日は年に一度の夏祭りだ。

 皆が笑い合い楽しんでいる中、一人の小学校低学年程の少年は、片目を瞑り真剣な表情をしていた。その手にはおもちゃのライフルが握られていて、銃身にはコルクが詰められている。

 少年の隣で、小さな拳を握り締め、期待に目を輝かせている少女は、

「悠也、頑張って!」
「任せとけ! こなた、お前が取り逃したゲームソフトは、俺がゲットする!」

 従兄妹の声援を受け、俄然やる気が出てきた悠也少年は、長方形の箱に梱包された新作のゲームソフトへと狙いを定め、引き金を引いた。
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