捧物
□18000hit御礼キリリク(香雪さまへ)
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翌日。朝、学校の下駄箱を開けると、封筒が入っていた。中身は手紙と写真で、手紙にはワープロで、
『砕蜂と別れろ。さもないと殺す。』
と書かれていた。昨日の奴か。あいつとはまだ、付き合ってもいねえよ。
あまりにもステレオタイプな脅しなので放っておくことにしようと思った矢先。被写体が目に飛び込んできてショックを受けた。
それは、情事の後とも思えるようなベッドの中から半身を起こしてどこかを見ている砕蜂の写真。どういうことだ? もっとじっくり見たい気もしたが、こんな写真をいつどうやって撮った? ムカムカする気持ちとムラムラする気持ちでない交ぜになった。
しかし、俺はともかく、砕蜂のほうは大丈夫だろうか。もし、同じ写真を送りつけられているとしたら? 俺は教室に急いだ。そして教室に入ると、砕蜂が珍しく何かを訴えかける表情で待っていた。
「砕蜂、どうした?」
「昼休み……、話を聞いてもらえるか? できれば屋上がいい」
話の内容は言わずと知れた。昼休みまでは気もそぞろで、授業中、何度か先生に注意を受けたが、それもよく覚えていなかった。
昼休み、2人で屋上に行く途中、砕蜂は無言だった。購買で昼御飯を買っていかなくてもいいのか、と尋ねても、食欲がない、とのことだった。当たり前か。
屋上に着くとあたりを見回し、砕蜂はようやく口を開いた。
「実は、今朝、下駄箱にこんなものが入っていて…」
それは封筒に入れられた手紙と写真だった。写真は裏向きに伏せられていたが、おそらく俺に送られたものと同じものか、それ以上にえげつないものが写っている…? 手紙のほうを見せてもらうと、文面は、
『檜佐木と別れろ。あんなに愛し合った仲なのに。』
だった。俺も封筒を取り出した。
「実は俺のほうにもこんなのが入ってて…。あのっ。写真はゴメン。不可抗力で見てしまったけど、これはお前が処分してくれ」
そう言って渡すと、ざっと表情がこわばり、次に耳まで赤くなった。俺にあんな写真を見られたのが相当恥ずかしかったのだろうか、砕蜂の顔は真っ赤だった。
「ゴメン。一瞬だったからそんなにじろじろ見た訳じゃねえんだ。な? 本当にゴメン」
「……。そんなことは、どうだっていい」
「へ?(いいのか?)」
「私と無関係の檜佐木にまで危害を加えようというのが許せん」
(そっち〜っ?! でも、無関係って…)
砕蜂は怒っていたのだ。
「いや、お前、こんな写真撮られて平気なのか?」
「平気なわけはなかろう? だが、よく見ろ。それは私であって私ではない」
「どういう意味?」
俺が思わずヒラリと写真を1枚取り、まじまじと見ていると、奪い返された。
「見るなっ!!」
(見ろと言ったり、見るなと言ったり、ややこしいな…)
「いや、見ろ、っつったのお前だし。でも、たしかにこの写真は不自然だよな。カメラ目線じゃないし。もしかしてCGか、これ?」
「ああ。おそらく。それは私の部屋ではない」
言われてみれば、いつだったか高熱でダウンした砕蜂を送った時に上がり込んだ部屋とは雰囲気が違う。
ただ、いずれにせよ、砕蜂を盗撮して何かのグラビア写真とCGで合成しているあたり、だいぶ病んでいる奴だと思う。手紙の文面にしても、何を考えているんだか。いずれ、何をしでかすか分からない。
だが、念のために確認しておきたかった。
「なあ、お前、本当に心当たりはねえの?」
「あるかっ! 大体から何が『あんなに愛し合ったのに』だ。妄想にも程があるわっ!!」
「お、おお、そうか」
俺はひとまず安心したのだが、
「貴様、疑っているのか?」
と、じろりと睨まれる。
「いや、ないないない」
「……。とにかく、檜佐木は気を付けろよ。相手は何をしてくるかわからん」
「いや、気を付けるのはお前だろ?」
「こんな奴、返り討ちにしてくれるわ!」
「……。あのなあ。お前が強いことはよく分かってるけど、少しは自分が女の子だってこと自覚しろよ? とにかく、ストーカー犯が捕まるまで、1人きりになる状況は作るな」
「う…。分かった」
「女の子」という言葉に反応したのか、砕蜂は少しトーンダウンして素直に頷いた。