異世界A
□プールに行こう。
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一瞬、俺のほうを縋るような目で見る。が、俺はつぃっと目を逸らした。
そう。これは俺が虎徹(姉)に頼んで仕組んだことだ。悪い、砕蜂。本格的に水泳の授業が始まるまでに、最低限の泳ぎは覚えろ。そう思っていたら、
「あ、檜佐木くんもいたほうがいい?」
と虎徹が言った。
「はぁ? 檜佐木?」
「はぁ? 俺?」
「なんか砕蜂さん、檜佐木くんのほうを見てたから。」
「お前ら女子の中に俺がヤロー1人が混ざるの、ヤだぜ。」
「なら、いっそ斑目くんとかも誘ったら?」
……しまった。さすがに砕蜂に泳ぎを教えてやってくれ、とは頼めなかったので、「砕蜂をプールに誘ってやってくれ」とだけ頼んだのだ。虎徹姉妹も伊勢も、小学生の頃スイミングスクールに通っていたそうだから、あいつらなら上手く教えてくれるのではないか、と思ったのだ。しかし、間の悪いことに斑目本人が通りかかり、
「何だ、呼んだか? あ? プール? うぉっし。行く行く!」
「一角が行くならボクも行くよ。」
(何で弓親まで?)
砕蜂が今度は訝しげな目で俺を見る。…バレたか?