異世界A
□雨宿り
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その下駄帽子のおじさんは、浦原喜助と名乗った。その店は実は駄菓子屋でたしかに浦原商店と看板がかかっていた。浦原さんは店長なのだが、半ば趣味(?)でやっていて、不定期に休むことが多いのだという。
「いや〜、こんな雨の日にわざわざ駄菓子を買いに来る子もいないかと思って閉めてたんデス〜。」
実際には商売的に卸しが多いのだというが、それにしても、どうやって生活しているのだろう? 菓子の賞味期限は大丈夫なのだろうか?
「あの…。」
「アタシがどうやって食っていってるんだろう、って思いました?」
((何故わかった?))
「いや…、その…。」
「アタシはね。ちょっとした町の発明家なんスよ。これでも結構、特許を取ってましてね。特許料と、親の残してくれたこの店舗兼住宅で、何とかやっていけるんです。」
「はあ…。」
「いやあ、ひどい降りになってきた、と思ったら、ウチの軒先で雨宿りをしている後輩を見かけたものだから、つい。ご迷惑だったらスミマセン。」
「いえ、とんでもない。タオルまで貸していただいて。」
その時、裏口と思われる奥のほうから、
「お〜い、喜助〜。手拭いをよこせ。あ〜、ひどい降りじゃった。」
と、特徴的な口調の聞き覚えのある声がした。