異世界

□二度目の会話
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さっきの生物の授業で心身ともに疲労していた俺は、机に片肘をつきながら、松本先生を鑑賞……、じゃなかった、授業に聞き惚れていたら、俺はうっかり当てられてから質問を聞き逃していたことに気づいた。(全然、聞いて無いじゃん、俺。マジぃ。)

すると、隣りの転校生、じゃなかった、砕蜂が、スッとメモを渡してくれた。俺は慌ててそのメモを見て、無事正答することができた。助かった。

でも、松本先生にはバレバレだったようで、授業が終わってから、

「檜佐木、助かったわね〜。」

などと嫌味を言われた。


俺は、昼休みになってから彼女を探して、礼を言った。彼女はいつも通り、図書室にいた。

「さっきの英語の時間、ありがとな。助かったわ。」

「別に。松本先生に見とれて質問を聞いていなかったようだったのでな。」

「うっせーな。せっかく礼言ってんのに。」

ちょっとだけムっとして言い返した。でも図書室ではあまり大声で話をするのも憚られるので(もっとも、ウチの学校で図書室を利用する奴なんてほとんどいないが)、

「ここ、座ってもいいか。」

と彼女の向かいの席を指差すと、

「どうぞ。」

と応えたので、そこに座った。


しばらく言いあぐねていたが、この前から気になっていたことを思い切って尋ねてみた。

「お前さあ、この前俺がメモ渡した時は無視しただろ? 何で?」

「他人に答えを教えてもらうのは、好きじゃない。」

「じゃあ、なんで俺にはメモをくれたんだよ。」

「一応、親切をしてもらった礼は、返さねばならんだろう。」

そう言ったきり、あとは黙々と、授業の予習だか課題に取り組んでいた。



余計なことをして嫌われたのかと思っていたが、一応「親切」と受け取ってくれてはいたのだな、と分かり、なぜか安堵している俺だった。
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