駄文(短)

□いい夫婦の日
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俺は檜佐木修兵。九番隊副隊長だ。

11月22日は、最近現世で「いい・ふうふ」と読み「良い夫婦の日」と言われているそうだが、我が家だって「良い夫婦」だ。色んな意味で「変わった夫婦」とは言われるが。

まず、妻のほうが偉い。役職も実力も上だ。でも、そんなことを俺は気にしない。誰が何と言おうとも、俺にとっては可愛い嫁さんだ。

今朝も彼女より早く起きて、朝ごはんと弁当を作る。これは、結婚前からあまり変わっていないのだが、「彼女が帰ってくるのは俺のところ」となったのは大きな違いだろう。

「梢綾、起きて!」

「ん…。修兵、まだ早い…」

「ほら、今日は隊首会でしょ? いつもより早く出なくちゃいけないんじゃなかったっけ?」

寝惚け眼で起きてくる俺の嫁さん。彼女は二番隊隊長にして刑軍統括総司令官。仕事のときの冷徹な顔からは想像もつかない。

同じ隊同士で結婚という例はちょくちょくあるが、隊が違って、さらに妻のほうが役職が上、というのは、護廷十三隊発足以来、稀有な例とのことだ。

とりあえず、2人で食卓について朝ごはんを食べ、俺が後片付けをしていると、梢綾は弁当の包みを持ってそそくさと出かけようとする。いつもなら「行ってらっしゃい」を言うところなのだが、今日は違う。彼女をむんずと捕まえて言う。

「“砕蜂隊長”、寝癖、直しましょうね?」

「私は癖っ毛だから、これでいいんだっ!」

「ダメ。隊首会の時くらいはきちんとしていかなくちゃ」

片付けの手を止めて、梢綾を洗面所に連行し、ドライヤーでブローする。

「ほら、こんなにきれいにまっすぐになった。ちゃんとトリートメントして乾かしてから寝てる?」

すると、彼女は真っ赤になって、

「…昨日は、その…、修兵と…して…、そのまま寝てしまった……って、貴様のせいではないかっ!」

「…ゴメン」

ぷうっと、まだうっすら赤い頬を膨らませて逆ギレされても、俺にとっては、いとおしい嫁さん。

「じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

さて。後片付けを済ませて俺も出かけますか。

ちょっと変わっているかもしれないが、こんな夫婦も、どうしてなかなか「良い夫婦」だと思わないか?


……と、時々俺は、そんな日が来るのを夢見ている。

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