駄文(短)
□69って…。A
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今年も6月9日がやってくる。そしてその日が近づくと俺の手元には少なからずプレゼントが届く。
言わずもがな、俺の顔にある刺青のせいだ。ほとんどの連中は、この数字が俺の誕生日だと思っている。そりゃ、そのくらいしか思いつかないだろう。
だが、プレゼントの中には、卑猥なDVDなども混ざっている。どうもここ数十年で、現世では「69」が卑猥な意味を持つようになってしまった。だから、俺のことを「かなりヤバい人」と思っている奴も少なからずいる。これはなんとか払拭したい。しかし、わざわざこの刺青の謂れを説明するのもどうかと思い、ここ数十年、俺はこの日が近づくと、あとう限り平常心で乗り切るようにしている。
だが。ここ数日、砕蜂隊長が妙に俺を避ける。弁当を食べている時も、こちらをチラチラ見るのだが、絶対に目を合わさない。しかも顔を真っ赤にして。…何かある。
廊下ですれちがった時に思いきって声をかけてみることにした。
「砕蜂隊長!」
「ひっ! な、なんだ?」
……。明らかに今、ビクっとしましたね?
「いえ、最近どうかしました? なんかウチにも遊びに来てくださらないし。」
「う…。」
キョロキョロと辺りを見回して、人がいないのを確認すると、俺の頬の刺青を指差して、やはり顔を真っ赤にしながら、
「檜佐木はその…。そういうことをするのが好きなのか?」
「はい? 俺、前にも言いませんでしたっけ?」
「ああ。六車九番隊の『六』と『九』というのは知っているが、その…。好いた者同士は6月9日に、そういうことをする習慣があるときいて…。」
「はいぃぃぃ?」
どうやらまた、ガセネタを吹き込まれてきたようだ。いい加減、学習してください。……あ。でも今、さらりと、とんでもないことを言いましたね?
「いやあ、砕蜂隊長が、そんなに俺のことを想ってくださっているとは。」
「莫迦者っ! いくら好きでも、誰がそんなことをするかっ! ……あ。」
こうしてまた、砕蜂隊長が顔を真っ赤にして、俺のことを避ける日々がしばらく続いた。