駄文(短)

□69って…。
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ある日、晩飯を食べ終わってから、砕蜂隊長が尋ねてきた。


「檜佐木。貴様はなぜそのような刺青を顔にいれておるのだ? 貴様は一部の者たちにはよほど『好きモノ』だと思われているそうではないか。」

(ああ…。いつかは言われると思ってた…(涙)。)

「これにはですね。深〜い訳があって…。ちなみに、砕蜂隊長はこの数字の意味をご存知で…?」

「うむ。現世では卑猥な意味もあるそうだが、もう1人、同じ刺青を入れていた男を知っている。だから、何か関係があるのかと思って尋ねてみた。」

俺は少し安堵した。

(よかった。ただの変態だと思われてなくて…。)

「俺、ガキの頃、これと同じ刺青を入れた人、つまり九番隊前隊長の六車さんに虚(ホロウ)から助けてもらったことがあるんです。おっかない人でしたけど。俺、助けてもらっても今度は六車さんが怖くて泣いてました。ヘタレですよね。でも、それがきっかけで死神になろうと思ったんです。」

「檜佐木は、六車拳西が隊長だった時に出会っておるのか…。」

この時、「六車拳西が隊長だった時」という言葉に僅かに違和感を感じたが、その時はあまり気にとめなかった。


「まあ、あの頃はホント、何も知らないガキだったんで、意味を知ってりゃ顔には入れなかったかもしれないんですけど、彫師のオッサンも流魂街の人で俺が言った通りの「文様」を入れてくれたわけで。第一、当時は、現世でもそんな卑猥な意味では通ってなかったんじゃないでしょうか。」

「まあ、そうだな…。でも、消そうと思ったことはないのか? 四番隊や十二番隊に頼めば、消せぬことはないだろう?」

「でも、俺、顔に入れたこと、後悔はしてないっすよ。あの時の恩は忘れたくないんで。テメエの面は、嫌でも見てしまいますからね。」

「そうか。ところで、その右側の傷は?」

「これも、俺が真央霊術院六回生の時に、1年坊の魂葬実習に付き添ったとき、突然とんでもなく強い虚に襲われて、何人か犠牲者が出た事件というか、事故があって、その時に付いた傷なんです。だから、こっちも消してはいけない傷なんですよ。」

「ああ、あの時の。」

「覚えていらっしゃるんですか?」

「まあな。隊首会でも、少々問題になったからな。なぜあのような事故が起こったのかと。たしか、藍染と市丸がすぐに討伐に赴いたから、被害があの程度で済んだものの、あ奴らがいなかったら檜佐木もここにはいなかったかもしれぬな。」

「そうですね。何か俺、九番隊に縁が深いみたいです。」

「そうだな。縁は異なものだな。」


そんな話をしたのも、今は昔。旅禍事件の起こる前のことであった。

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