仔砕部屋

□第7話
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小さな砕蜂隊長は、俺の死覇装の端をきゅっと掴んで、

「ねえ。檜佐木のお兄ちゃん、泊まっていってよぅ」

と、目を潤ませた。……芝居ではなさそうだ。

「でもね。もう遅いし、俺、着替え持ってないから。また今度、ね?」
「今度って、いつ? 明日?」

子どもの思考回路はなかなかに手強い。李大人に助け船を出してもらおうと目配せをすると、

「梢綾お嬢様。どうかお聞き訳くださいませ。檜佐木様はお着替えがございませんし、お仕事もございます。ですから、明日にしていただきましょう」
(げえっ!)
「あの、えっと、お気持ちは嬉しいんですけど、俺……」
「爺やからも頼んで! 明日。ね?」
「檜佐木様、どうかわたくしからもお願い申し上げます。どうかこの通り……」

李大人に頭を下げられてしまったら、さすがに断れない。まあ、もしかしたら、明日の朝には、砕蜂隊長が元の姿に戻っているかもしれない。

「じゃあ……、また明日来るね」

そう言って、小さな砕蜂隊長の頭を撫でると、

「明日、約束よ? お仕事が終わったらすぐ。ね? 指切りげんまん!」

指切りをして約束をすると、何とか機嫌が直った。

「梢綾ちゃん、また明日ね。だから今日はもうお休み」
「うん! お休みなさい!」

小さな砕蜂隊長とは玄関で別れ、門まで見送りに来てくれた李大人が切り出した。

「檜佐木様、色々とご無理を言って申し訳ございません。その……、明日だけとはいわず、砕蜂様が元に戻られるまで、しばらく当家にご滞在いただくことはできませんでしょうか……?」
「はいぃ? でも俺、仕事が……」
「もちろん、日中はお仕事がございますゆえ、こちらから通う、ということではいかがでしょうか」
「そんな…、厚かましいこと……」
「どうか、お願いにございます。砕蜂様を助けると思って……」

そういって李大人に深々と頭を下げられると、断れない。何だかとんでもないことになってきた。

「はぁ……」

梢綾ちゃんもとい砕蜂隊長と李大人に信用されているのは嬉しいが、どうするよ、俺?

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