仔砕部屋
□第6話
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食事は、俺がいつも作っているのと違って豪華だった。実家に帰ったらいつも美味しいものが食べられるのに、とあらためて思った。
だが、小さな砕蜂隊長は、小さいだけあって、あまり食が進まないようだ。
「……お肉、嫌い…」
「好き嫌いしちゃダメだよ」
「大人なった私は食べられるようになってる?」
「そりゃ、もちろん!(ゴメン。嘘です。好き嫌いは多いです)」
「じゃあ、大人になったら食べる!」
「ダメ。今から食べなくちゃ大人になれないよ? それに、流魂街ではこんなご馳走、食べられないんだよ」
「るこん…がい……?」
「俺が育ったとこ。お腹が空くっていうことは、霊力があるってことなんだけど、流魂街ではみんなが皆、霊力がある訳じゃないからね。食べたくても食べられない人も沢山いるんだ。せっかく霊力があっても、ご飯が食べられなかなったら力が出せない。梢綾ちゃんは恵まれているんだよ?」
説教臭くなってしまった。チラっと李大人を見ると、静かな笑みを湛え、頷いてくれた。すると、
「ゴメン…なさい…。もう好き嫌いしない…!」
小さな砕蜂隊長は目をつぶって、肉を頬張り、飲み込んだ。
「梢綾ちゃん、お利口さんだね」
「うん!」
そう言うと嬉しそうに笑い、少し残しはしたが、一生懸命食べた。
食事が終わり、砕蜂隊長は女性の使用人とお風呂に入りに行った。食後のお茶を注ぎながら李大人が言った。
「檜佐木様、先ほどは、ありがとうございました。梢綾お嬢……砕蜂様は、あのくらいの頃はたいへん食が細く、偏食だったのです……」
「いやっ、俺こそ出過ぎたことを、スミマセンでしたっ!」
「いえいえ。わたくしどもでは、なかなか言うことを聞いてくださらなかったのですが、あんなに沢山お食事を召し上がるのを拝見するのは初めてです。……砕蜂様の今の状態がいつまで続くか分かりませんが、お小さい身体では万一、病にかかりでもしたらいけませんので、しっかりお食事は召し上がっていただかなくてはなりません」
「そうですね……」
そんなことを話していると、寝間着に着替えた小さな砕蜂隊長が、トタトタと駆けてきた。
「檜佐木のお兄ちゃん、まだいてくれたんだ!」
「うん。でも、もうすぐ帰るよ。梢綾ちゃんは早く寝なくちゃ」
「……もう帰っちゃうの?」
小さな砕蜂隊長は、悲しそうな顔をした。