仔砕部屋
□第5話
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俺が蜂家で夕食をいただくことが決まると、小さな砕蜂隊長は、
「よかったぁ! ねえ、檜佐木のお兄ちゃんは何が好き?」
と、人懐こく尋ねてきた。
「俺は何だって好き嫌いなく食べるよ。あ、ウニだけはちょっと苦手だけど……」
「え〜っ。私、ウニ大好きよ?」
「じゃあ、今度ウニを一緒に食べる時は、俺の分を梢綾ちゃんにあげるよ」
こんな会話をしていると、李大人が、
「梢綾お嬢様は、檜佐木様と仲良しですね」
と言った。すると小さな砕蜂隊長は無邪気に、
「うん。檜佐木のお兄ちゃん、大好き!」
と言った。……是非、元の姿に戻った時にも言ってほしい。
食事の用意ができるまで、本を読んだり折り紙をして遊んでいたら、小さな砕蜂隊長が不意に、
「爺やは黙ってるけど、父様や兄様は、もういないのね」
と呟いた。……さすがに分かっていたか。
「だって、私が大人になる迄、随分時間が経ってる筈だもの。爺やも、みんなも年いってるし。父様も兄様も言ってたの。梢綾が大人になるまで長生きはできないよ、って」
幼い少女が淡々と語る様には、何か覚悟めいたものを感じさせた。物心ついた頃から教えこまれていたのだろう。が、小さな砕蜂隊長は急に、話題を変えた。
「ねえ、大人になった私って、どんな感じ? ……ちゃんと四楓院夜一さまにお仕えできるようになっている?」
そうか。こんなに小さな頃から聞かされていたのか。
「そりゃあ、もちろん。梢綾ちゃんはね。すっごく強くなって、夜一さんからも頼りにされて、……夜一さまの後を継いでいるんだよ。だからみんな、梢綾ちゃんのことを『砕蜂隊長』って呼ぶだろ?」
すると、今度は不安そうに、
「夜一さまの後を継いでいる、ってことは、夜一さまはどうしたの?」
……鋭い。
「夜一さんは、現世で、とっても大事なお仕事が出来たから、梢綾ちゃんに隊長職を任せたんだ」
「ふ〜ん……。そっかぁ……。隊長さんになれるんだ、私。……じゃあ、檜佐木のお兄ちゃんより偉いの?」
「そうだね。隊は違うけど」
そんなことを話していると、食事の用意ができたと、李大人が告げに来た。