仔砕部屋

□第1話
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虚(ホロウ)をいつものように、難なく片した。と思ったら、急に意識が遠退いていった。……なんだ、これは…?

「隊長、隊長っ! どうしたんすか、隊長っ!」
(……大前田、喧しい……)

私はそのまま意識を失った。

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

「でよ。そのまま、こうなっちまったんだよ」

二番隊副隊長・大前田希千代は言った。

「四番隊とか、十二番隊の連中は、何つってんですか! っていうか、治るんすか、この状態っ!」

檜佐木修兵は、油煎餅をかじりながら呑気そうに語る同僚の大前田に食って掛かった。

「さあなぁ。肝心の虚(ホロウ)は、隊長が片しちまったから、原因物質まで消えちまった、ってなことを言われてよ。ただ、簡単に殺られるような奴だったら、効果はそんなに長期間持続しねえんじゃねぇか、って」

そんな2人を不思議そうに見比べる、おかっぱ頭の幼い少女。人間の年の頃にして4、5歳くらい。それは、心身ともに、幼児に戻ってしまった砕蜂だった。

「とりあえず、希代の着物を着せてはみたんだけどな。まるで子どもに戻っちまってるから、どうしたもんかと思って、おメエを呼んだっつー訳だ」
「いやいや、俺には真っ先に報せてくださいよ」
「しっかし、何て呼んだもんかなぁ……。『砕蜂隊長』っつーのもなぁ。何も覚えてないみたいだからよ……」

檜佐木は試しに尋ねてみた。

「お嬢ちゃん、お名前は?」

すると少女は、

「蜂(フォン)……梢綾(シャオリン)……」

と、小さな声で答えた。どうやら、曾祖母から受け継いだという「砕蜂」という名前を覚えていない、つまり、そのくらい幼い頃に戻ってしまったようだ。続けて、

「お兄ちゃんのこと、分かる?」

と訊くと、

「副隊長……さん…?」

と、少し怯えながら答えた。残念ながら、檜佐木のことも記憶になさそうだ。

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