駄文(長)


□すれちがい
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こうして俺は、東仙隊長に置いていかれた。

東仙隊長が出奔した後、ほとんどの隊長業務が俺にふりかかってきた。隊長職がこんなにも忙しいとは思わなかった。

思えば、部下にあまりものを頼む人ではなかった。ふと、瀞霊廷通信の編集作業をしていた時に、

「……檜佐木なら、私がいなくなっても、任せられるな。」

と言った東仙隊長の言葉が蘇ってきた。隊長はあの頃から、既にご自分のいなくなった後のことを考えていたのか?


それにしても、砕蜂隊長は、よくあの華奢な身体でこれだけの業務をこなしているものだ、とあらためて彼女の凄さを感じる。もっとも、大前田さんがかなり苦労している節は見受けられるが。

だが俺としては、何とか砕蜂隊長との昼の弁当タイム=憩いの時間だけは、確保したい。時間的にもきついなか、やっとのことで数日ぶりに弁当を届けた。

「ちわ〜っす。砕蜂隊長、ご無沙汰してます。弁当で〜す。」

しかし、砕蜂隊長の姿はなかった。大前田さんが気の毒そうな顔で、

「隊長なら、夜一さんと昼飯に行ったぜ。」

「へ? 外食はされないんじゃなかったんですか?」

「ここんとこ、ずっと『夜一さま、夜一さま』でよ〜。ま、俺としては、八つ当たられる回数が減っていいけどな。」

そういえば最近、伝令神機で連絡しても、返事がなかなか返ってこない。弁当を届けられないことを詫びる連絡に対しても、(もともとそういうところはあったが)そっけなかったような気がする。


俺は、砕蜂隊長にまで置いていかれたような気がした。そして、それっきり、昼に弁当を届けるのをやめてしまった。
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