駄文(長)
□夢か現か
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ここのところ、檜佐木の家に厄介になることが多くなった。
檜佐木の家は、現世の様々なもので溢れていて、見ていて飽きない。そして、奴の晩飯を食べると大概眠たくなってきて、布団を敷いてもらって寝る、というのが慣例化してしまっている。
檜佐木の布団はなぜか寝心地がよく、折角私のために新しい布団を用意してくれたのだが、朝、気がつくと、私が檜佐木の布団に入り込んでいることが多い。そして奴は、おそらく無意識なのだと思うが、私を抱き枕よろしく抱きしめていることが多い。
しかし、私のほうから布団に入り込んでおきながら、その度に檜佐木の腹に肘鉄をかますのはさすがに気の毒なので、最近では、
「おい、放せ。」
と言うと、奴は寝惚け眼で、
「あ……、砕蜂隊長、スミマセン。おふぁようございま〜す。」
などと欠伸をしながら、私を解放する。
――年頃の男女がこんなことでいいのだろうか…?
私が檜佐木の家を時々訪れる、ということは最早、周知の事実になっているようだ。先日も十番隊副隊長の松本に、甘味処で出会ったときに、
「砕蜂隊長〜。修兵とは仲良くやってます〜?」
などと訊かれた。が、「仲良く」も何も、
「別に。たしかに晩飯などで厄介になってはいるがな。」
と応えた。
「え〜。付き合ってるんだったら、もっとこう、彼氏との浮いた話とかってないんですか〜?」
「貴様の言う〔付き合う〕という意味が些か解りかねるが、少なくとも檜佐木は『彼氏』とやらではない。」
「でも、修兵の家によく遊びにいらしてるんでしょ?」
「ヤツの家には現世のモノが沢山あって興味深いのでな。家電製品はひと通り使い方を見せてもらったが、書籍やらでぃーぶいでぃーとやらが、行くたびに増えているので飽きぬのだ。」
「あのう…(でも、それを〔付き合ってる〕っていうんじゃない?)、本当にそれだけなんですか?」
「それ以外に何がある?」
乱菊は砕蜂がとぼけているだけだとは思えず、檜佐木に直接訊いてみることにした。