駄文(長)


□昼休み
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あの雨の日以来、つい彼女の姿を目で追ってしまう。

廊下などですれ違っても、これまで通り、頭を下げる程度の挨拶しかせず、視線を合わせることすらしない。というか、できない。

あの日、部屋の端までぶっ飛ばされるほど怒られた割には、むこうも知らん顔だ。というより無視か?

こちらは気になって仕方がないのに…?


そんなある日、東仙隊長から、二番隊に書類を届ける用事を仰せつかった。

二番隊隊舍まで来ると、檜佐木はいつになく緊張した。大きく深呼吸すると、東仙から預かった書類を届けに来た旨を告げて、執務室に通される。

この前と違って、今日は二番隊副隊長の大前田がいる。

なんだか少しホッとしたような残念なような気分だったが、
「九番隊副隊長・檜佐木です。書類を持って参りましたので、ご確認と署名、隊長印をお願いいたします。」
と今度は砕蜂に向かって来舍の主旨を告げた。

「分かった。そこでしばらく待っていろ。すぐに処理する。」
砕蜂は顔も上げずに言う。
大前田が茶を淹れに席を外したので、檜佐木は思い切って、先日の無礼を詫びた。
「あ、あの、砕蜂隊長、この前は本当に失礼いたしました。どうか無礼をお許しください。」
「何のことだ。」
「へ?」


……なかったことにしろ・ってか。

その時、大前田が茶を運んできたので、会話はそこで途切れた。
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