駄文(長)
□出逢い
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それは、突然だった。
勿論、彼女を知らなかった訳はない。彼女は二番隊隊長・砕蜂。
その日は朝から雨模様で、夕刻、隊舎の執務室の窓から何気なく中庭に目をやった時、森のほうへ向かう人影に気付いた。遠目でも女性であることは判った。
「こんな天気でこんな時刻に傘も差さずに…?」
何か急ぎの用なら、傘を差さずとも瞬歩を使えばよい。しかし、その人影は俯き加減で、ひどく悲しそうに感じられた。いくら死神とはいえ、性質(たち)の悪い虚に出くわせば危険だ。
その人を放っておけない気がして、咄嗟に、
「東仙隊長、スミマセン。俺、ちょっと用事を思い出しました。私用で申し訳ありませんが、少し席を外します。」
とだけ告げて、九番隊副隊長・檜佐木修兵は、番傘を掴んで駆け出していた。