異世界C

□浦原商店の朝
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翌朝。ケータイの微かなアラーム音でふと目が覚めると、5:30だった。でも、アラーム音は俺のケータイからではなかった。襖を隔てて隣の部屋から聞こえてくる。慌ててガバッと起き上がる。

そうだった。昨日から浦原さんの家で厄介になることになったのだ。このケータイは砕蜂の…?

襖越しに小声で呼んでみる。

(砕蜂、砕蜂っ! 起きてるか?)

……。答えがない。とにかく洗面所に向かうと、台所では、すでに砕蜂と雨(うるる)が朝ご飯の支度をしていた。

「遅いっ!」

開口一番、砕蜂に怒鳴られた。

「あ、悪りぃ。でも、お前、ケータイのアラーム、鳴りっぱなしだぜ?」
「……。あ、消し忘れていた。ちょっとここを頼む!!」

と、今度は砕蜂が慌てて2階に上がって行った。残された俺は、

「…あの、雨ちゃん、俺、何したらいい?」
「朝早くから、…スミマセン。今…、砕蜂さんが刻んでくれたお野菜を…お鍋に入れてくださいますか?」

そこには山のような量の野菜が。どう考えても人数×3倍はあるような気がする。

「あと、最後にお豆腐を…」

と雨が冷蔵庫から出してきた豆腐は、5丁あった。朝からどれだけ食べるんだ?

「雨ちゃんは、テッサイさんがいない時は、1人でこれだけ作るの?」

と尋ねると、

「はい……。でも、…たまのことですから…。今回は、…お2人に手伝っていただけて、助かります」

と、健気な答えが返ってきた。
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