捧物
□18000hit御礼キリリク(香雪さまへ)
1ページ/6ページ
ここ数日、誰かに見られているような気がする。でも、見回してみても分からない。どこから見ているのだ…?
正直、不埒な輩など自力で撃退できる自信はある。しかし相手が特定できない限り、この気持ち悪さは解消できない。そしてそれは日を追ってエスカレートしていった。
最初は休み時間の教室や図書室といった場所だったから、校内の他のクラスの奴かと思っていた。が、段々と授業中や放課後、道を歩いているときにも、ふと「見られている」ような感じがするようになってきた。授業中はいくら何でも同じクラスの者なら気付く。ということは、教室の外? 思わず窓の外を見てしまうが、さすがにどこから見られているのか分からない。
これには檜佐木も気付き、
「砕蜂、どうかしたか?」
と尋ねられ、思いきって檜佐木に話してみた。檜佐木は予想通り深刻そうな顔をした。
「それって、ストーカーってやつだよな、やっぱ」
「まだそうと決まった訳ではないが、少し気になってな。まあ、不埒な輩くらい、自分で撃退できるが、相手が特定できないとな」
……そういう問題じゃねえ、と突っ込むべきか、考えてしまった俺だったが、砕蜂からストーカーにつけ回されているかもしれない、と聞いて、心配もさることながら、何ともいえない不快さを感じていた。砕蜂に思いを寄せている俺としては、自分の大切なものを汚されているような気がした。砕蜂が自分をどう思っているかは分からないが、話してくれた以上は、絶対に彼女を守り、ストーカーを撃退しなくては、と心に誓った。
「なあ、あんまりエスカレートしていくようなら、警察に相談しろよ。校内だけでも、他の奴らに協力してもらったらどうだ?」
「…まだそうと決まったわけではないし…」
「でも、もし本当にストーカーだったらどうする? 目は多いほうがいいだろ」
「……もう少し様子をみる」
砕蜂は頑なだった。仕方がないので、
「何かあったらすぐ言えよ? とりあえず、1人きりになるのはなるべく避けろ」
「わかった」
こうして俺は、砕蜂のボディガードよろしく、これまで以上に彼女と過ごすことになった。すると、 確かに誰かに見られてるような気配を感じた。どこから…?
それから数日後。図書室でいつものように2人で自習している時、ふと書棚の陰からこちらを伺っている奴に気付いた。立ち上がってそちらに行こうとすると、奴もこちらに気付いてすっと図書室から出ていった。野郎だということは判った。背はそんなに高くない、ごく普通の体格だったが、顔までは確認できなかった。大声を出して追いかけるのも憚られたので、とりあえず席に戻ると、砕蜂が少し緊張した面持ちで、
「檜佐木…?」
と尋ねてきた。
「ああ。あそこの書棚の陰からこっちを見てる奴がいたから、そっちに行ってみたんだけど、逃げられた」
「そうか…」
「まあ、そんな心配すんなよ」
俺が付いてるから、なんてことはとても言えなかったが、
「お前なら、あんな奴、すぐに伸せるわ」
「まあ、な……」
しかし、それはこれから起こる「事件」の始まりに過ぎなかった。