異世界A

□長い1日の終わり@
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走っていく檜佐木の後ろ姿を見送りながら、ぼ〜っとしてしまう。

「水着、可愛かった。似合ってた」

という言葉が頭の中をぐるぐると回る。「お世辞に決まってる」、そう思っても火照ってくる頬をどうすることもできない。

檜佐木の姿が見えなくなってもしばらく立ち尽くしてしまった。どのくらいそうしていたのか、時間にしては僅かだったのかもしれないが、ハっとして家に向かう。鍵を開けて、自分の部屋に入ると、どっと疲れが押し寄せてきて、ベッドに俯せになる。今日は本当に疲れた…。

檜佐木は、私にとってどういう存在なのだろう?

ぶんぶんと頭を振って、それ以上は考えないことにする。明日からはまた日常が戻ってくる。授業の用意と予習をしなくては。でもその前に、洗濯をしなくては。水着は別にしなくてはいけない。改めて見てみると、自分はこのような格好で人前にいたのか。恥ずかしいこと、この上ない。

そういえば、檜佐木も水着だった訳で。細身だがほどよく付いた筋肉。スラリと背が高く、世間の基準からすると、間違いなく格好良い部類に入るだろう。私となんか釣り合いが……、このようなことを考えるのはやめよう。

とにかく、明日の準備と洗濯だ。
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