異世界A

□黒い影の正体
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今、私は檜佐木に背負われている。密着している部分が熱い。寒いわけではなかったのだが、さっきまで震えていたのが嘘のように落ち着いて、広い背中に身体を預けた。だが今度は妙にドキドキしてしまった。鎮まれ、私の心臓。

25mプールの傍にジャグジーがあるので、そこで下ろしてもらった。幸い、ほかには先客がいなかった。

「大丈夫か?」

もう一度問われたので、

「ああ。」

と答えた。いつもなら「あとは放っておいてくれ」と言うところだが、先ほどの出来事についてどうしても話しておきたかったので、

「すまんが、もう少し付き合ってくれるか?」

と言ってみた。すると奴は何を誤解したのか、みるみる真っ赤になった。

そういえば、虎徹はどうした? 辺りを見回すと、プールの入口で大きな身体を隠すようにして、こちらの様子を窺っているのが見えた。そしてこちらが気づいたことが分かると、ひらひらと手を振って、そそくさと消えた。

……。虎徹、私と檜佐木を2人きりにするつもりか? しかし、虎徹にこのような話を聞かせるわけにもいかないので、仕方がないか。
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